スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◆実家へ帰らせて頂きます!
私は今、四つ葉の3階の会議室にいて、殆どの先輩達が見守る中でノートパソコンと充電器をボストンバックに詰めて、宿題で使っていた資料の紙束を手にしてバインダーにはさみ、それもバックにしまってチャックを閉める。

「これで全部です。あの、石毛先輩」
「どうした?」
「まだ清書が途中ですいません」
「良いよ。今回ばかりは宝条さんのせいじゃないし、いつも丁寧に入力をしているのを見てるから、戻ってきたらまたお願いしたいな」
「ありがとうございます!」

石毛先輩が優しく言うので良かった…、そろそろ四つ葉を出なきゃ。

会議室がノックされてドアが開くと、仁さん、高坂専務、見慣れないスーツ姿の男性と…橘さんの姿があって、男性は橘さんの腕を掴んで私の所に来た。

「この度は姪がご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした」

スーツ姿の男性が深くお辞儀すると、その後ろにいる橘さんは顔を反らし、男性が頭を上げると左手で橘さんの頭に置いて、橘さんの頭を下げようとする。

「やめて下さい!」
「お前は反省をしていないんだな。やめて下さいと言える立場でも無いだろう!!」
「今は2人が揉める時じゃない!」

男性と橘さんが揉めそうな所を、高坂専務がピシャリと止める。

「彼は俺の秘書を長年勤めている橘祐一で、体調不良で入院の間はその姪の橘を雇ったんだ」
「私の指導不足というか、本当に恥ずかしいです。宝条さんはお怪我はありませんか?」
「えっと、怪我は無いですけど、どうして橘さんが?」
「宝条さんを在庫室に閉じ込めたのは…、姪なんです」
「ー!ー」

高坂専務からの説明に橘祐一さんはものすごく思い詰めながら閉じ込めた人物の名前を告げ、会議室がしぃんと静まる。

「昨日、高坂専務から電話で連絡があり、事情を姪に尋ねましたが最初は知らないの一点張りでしたが、根気よく話し、持ち物を調べたらバックの奥底にこちらがありました」

橘祐一さんがスーツの上の内ポケットから取り出したのは見慣れない鍵で、もしかしてこれが私が閉じ込められた在庫室の鍵?!

「許して下さいとは言いません。今後は姪を四つ葉に来ないようにする、そう決めました」
「そんな!」
「お前は黙っていなさい!」

橘さんは橘祐一さんの言葉に納得していない顔をするけれど、私だって閉じ込められてとても怖い思いをしたし、悶々とする。

「邪魔しないでって言ったのに…、何も言ってこなかったのが腹が立って閉じ込めようと思った。でも周りが助けて…、どうして貴女は周りから好かれてるの?ずっと在庫しtー…」

橘さんの言葉が途中で終わったと同時に水野先輩が私の前に入り、バチンという音が聞こえた。

皆でぽかんとしていると、水野先輩ははぁと溜め息を吐く。

「俺、君のことを歓迎会で見た時から好きだったんだ」
「え…」

水野先輩の言葉に橘さんが驚くけど、この会議室にいる皆も同じだと思う。

「宝条さんは宝条さんなりに頑張っているし、俺は君が高坂専務の無茶ぶりや四つ葉の仕事を懸命にこなしているのを知っていたし、飲み会でも君を評価している人もいたよ。宝条さんだけ好かれているわけじゃないのは分かって」

水野先輩は橘さんの事を話すと、左手をギュッと握る。

「でもこういう事をする人だとは思わなくて、残念だよ」

水野先輩はそう言うと自分の席にいき、バックを持って仁さんと高坂専務の元に行く。

「取材があるので先に四つ葉を出ます。宝条さんもゆっくり休んでね、今度はサッカーのルールを教えるよ」
「はい…」

水野先輩は会議室のドアを開け、秋山先輩も一眼カメラを手にしてすたすたとドアに向けて歩き、仁さんに顔を向ける。

「水野の事は任せて下さい」
「お願い」

仁さんが短く返事をすると秋山先輩は会議室を出ていき、橘さんは自分の右頬に手を添えて俯く。

「次の仕事に就くまでは今日の事…、忘れないようにしなさい」
「はい…」

橘祐一さんが橘さんの背中に手を添え、本人を外に連れ出し、また私達の方に体を向けた。

「本当に申し訳ございませんでした…、今日は失礼します」
「………」

橘さんは無言で頭を下げ、2人は立ち去っていった。
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