スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
私はお母さんが作ってくれた玉子焼きを一口含みながら、目の前の光景を見る。

「高坂専務はとても面白い方ですねぇ」
「いえいえ、褒めても何も出ないですよぉ」
「………」

お父さんはすっかり酔っていて、高坂専務も顔が少し赤いし、お母さんが頼んだお寿司は9割は無くなって、私の隣に座る仁さんはずっと黙りながら箸を進めている。

「ほら真琴も荒木編集長のグラスが空いているから、新しいのを注ぎなさい」
「う、うん…」

お母さんに促され私は箸を置いて、瓶を持って仁さんが使っているグラスにビールを注ごうとしたら、仁さんは左手でグラスの口を覆い、私の方に顔を向けた。

「これ以上はいいので、烏龍かお水をお願いします」
「すぐ持ってきます」

私は瓶を置くと立ち上がって、食事をしている和室から出てキッチンに向かい、食器棚から新しいグラスを取り出す。

仁さんってビールを1杯しか飲んでいないけど、すぐ酔っちゃったのかな?そんなに強い度数の物じゃないけど…と思いながら冷蔵庫を開けて、烏龍の大きいペットボトルを取り出して、新しく注いでいると、頭の上にポンと手が置かれたからそっと振り返ると仁さんがいた。

「お母さん達は?」
「高坂さんと一緒に盛り上がり中」

仁さんは烏龍が注がれたグラスを手に取って一気に飲み干して、ふぅと息を吐く。

「もう一杯、飲む」
「はい」

私は静かに注ぐと、仁さんはゆっくりと飲む。

「結構強めの飲み物でした?」

仁さんはグラスから口を離すと、私に顔を向ける。

「あんなのは酔う度数じゃない」
「じゃあ、どうしてですか?」
「………大切な人の家族と飲むのって緊張するし、今は上司として振る舞わないと、と思っただけ」

“大切な人の家族”…、ここが2人きりで良かった、絶対口元がニヤけているもん。

「お父さんが言っていたけど、俺もこの1週間、真琴がどう過ごして行くか見守るし、様子を見に来る」

仁さんがまた大きな右手で私の頭の上にポンと置き、私はえへへと笑う。

「上司と部下として振る舞うのって、大変だな」
「下の名前で呼ばない様に気を付けます」
「俺も」

仁さんは私の髪の毛をクシャッとして手を離し、グラスを洗って水を注ぐ。

「戻ろう」
「はい」

私も新しいグラスを出して烏龍を注ぎ、2人でグラスを持って和室に戻ると、お父さんは顔が真っ赤で、高坂専務は頬がピンクになっていた。

「お父さんってば飲みすぎ!」
「高坂さんもそろそろお酒を止めな」
「いやぁ~高坂専務にのせられて、気分が良いんだよ」
「荒木は真面目過ぎで、面白くないなぁ」
「俺、そろそろ帰ってスポーツのテレビ放送を見たいから御暇したいんだけど」
「おや?それだったら泊まって行けば良いじゃないか」
「えぇぇ?!」

お父さんの突然の提案に、私は大きな声を出しちゃった。

「ご自宅の場所は分からないけど、もう遅いし、高坂専務もこんな状態ですし、この和室を使えば2人分は余裕だろ」
「ですが…」

お父さんの提案に仁さんがかなりの動揺で返答に困っているし、お父さんってば!!

「荒木編集長が困っているじゃん!」
「流石に2人でお世話になる訳には…」

するとお父さんは仁さんの肩に両手を置くと、仁さんを見上げる。

「荒木編集長とはじっくりとお話もしたいので」
「………分かりました。駐車場で待機している高坂の秘書に事情を電話で伝えたいので、外に出ても宜しいですか?」
「ええ。真琴は片付けとお布団の準備で、母さんは来客用の寝間着をお願い。父さんは風呂を洗うぞ」

うう、急展開になっちゃたし、そっと仁さんの様子を見るけど、内心、どう思ってるかな?
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