スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁
まさかこんな展開になるとは思わなくて、一度真琴の家を出て、祐一さんに電話を掛けようと思ったけど、直接駐車場に行き、車の運転席の窓ガラスを軽くノックをするとドアが開いて祐一さんが降りてきた。
「稔が酔いつぶれて、俺と一緒に宝条さんの家に一晩世話になる」
「稔の奴…。分かった、トランクに予備の着替えがあるから持っていって」
「ああ、ありがとう」
「仁君も稔の悪酔いにいつも付き合ってくれて、ありがとね」
「いい大人が大人に世話になって恥ずかしい」
俺は祐一さんがトランクから取り出した荷物を受け取り、ムスッとしながら言うと祐一さんは笑う。
「仁君に出会う前も稔の酔い方は変わらないし、俺も毎回巻き込まれて大変だった。いや過去形じゃないな、大変だよね」
「本当にそう」
「でも稔がいなかったら仁君が宝条さんのご家族にもっとキツく言われていただろうし、お酒も率先して飲んだりするのは稔なりの守り方だと思うよ」
「………それは感じた」
稔が真琴の家で会話の主導権を握ってご家族からの厳しい言い方を受け止めていたし、食事の場でもお酒を率先して飲んだりお酌をしていたし、いつも稔の人柄に助けられている。
「明日の朝6時に稔を叩き起こす」
「うん。この駐車場にネクタイを引っ張りながら連れてきて。後…」
祐一さんが俺の顔を真っ直ぐ見る。
「里香が四つ葉の君達を傷つけて…本当にご免」
深く頭を下げる祐一さんは、両手をギュッと強く握っている。
「頭を上げて」
祐一さんはゆっくりと頭を上げた。
「祐一さんを信じているから話すけど…、俺さ…」
「うん」
「宝条さんを…、真琴に怖い思いをさせた姪の橘さんを一生許すつもりは無い。それだけは分かって欲しい」
俺の言葉に祐一さんは目を見開く。
なんとなく祐一さんには俺と真琴のことを話してもいいと、長年の付き合いで感じたし、橘さんにはもう一生会わないけど、許すことは無いし、それだけは身内の祐一さんに話したかった。
「稔や宝条さんのご両親にはまだ俺達のことを話していないから、宝条さんが話しても良いよと言うまで秘密にして欲しい」
「勿論だよ。俺は稔の様に茶化さないし、仁君のことを本当の弟の様に感じているから、いつでも恋バナには相談に乗るよ」
「ありがと。もう戻る」
「また明日、この駐車場で」
祐一さんが精算機にお金を入れて車に乗り込み、走り去る車を見送って真琴の家に戻った。
こんな展開で真琴の家に泊まることになるとは思わなくて、和室に敷かれている布団に豪快に寝ている稔の姿にがっくりし、布団の側に祐一さんから受け取った着替えを置いて、俺も用意された着替えに替えていると、和室のドアが開いて真琴のお父さんが入ってきた。
「最後に一杯、どうですか?」
「一杯だけでしたら」
「勿論ですよ」
俺は真琴のお父さんと一緒にリビングに行こうと廊下を歩いていたら、お父さんが立ち止まって入ろうとせず、どうしたのかと思ったら、指で中を指したので、少しだけ開いているドアからそっと一緒に中を覗いた。
そこには真琴の姿があり、テレビにはいつも一緒に見ているスポーツのテレビ放送が流れていて、真琴は必死にペンをノートに走らせ、顔をテレビとノートに行ったり来たり動かしている。
お父さんは真琴の姿をじぃっと見つめ、目元が潤んでいた。
「ちゃんとやるべきことをする娘になったんですね」
「ええ、まだ漢字の誤字脱字が多いので本をもっと読むようにとは伝えています」
「恋愛小説を読んでいるのに、活かしきれてないな」
「これから伸びますので見守りますし、折角1週間あるので、2つ宿題を追加させます」
「良いですね。ビシバシと鍛えて下さい」
リビングの前で話しをしているとドアがバッと開かれて、真琴がペンを持ったまま俺達を見上げる。
「視線を感じるなって思ったら…、早く寝なよ!荒木編集長は明日も仕事なんだから!!」
「せめて最後の一杯だけ飲ませなさい」
「でも…」
「………」
真琴が俺の機嫌を伺うように見上げ、俺は黙って頷いた。
「一杯だけだよ、もう」
真琴は顔をぷいっと横に向け、キッチンに向かう。
真琴は冷蔵庫から瓶1本とグラスを2つ用意して、リビングのテーブルに置いて、3人で机を囲み、俺は注がれたビールを一口飲んで、グラスを置いた。
「荒木編集長は四つ葉にいるのはどれ位ですか?」
「もう11年になります。最初は高坂がー…」
俺は真琴のお父さんに四つ葉に入った経緯やスポーツ部での出来事をポツポツと話し、それを真琴は目をキラキラさせながら聞いている。
「5月号も楽しく読ませて頂きました。荒木編集長の企画の所は読み応えあって、素晴らしいです」
「ありがとうございます。その言葉が聞けるのが、編集者として1番嬉しいです」
「次の6月号も凄いんだよ。鷲尾さんという野球の用具係りを携わっている人のインタビューで、取材に同行をさせてもらったの。そこでねー…」
真琴が一生懸命にその時の様子を話し、それをお父さんはグラスに口をつけながら目を細め、飲んでいる。
なんだかこの空気というか、雰囲気って自分の実家とは違う温かさがあって、少しだけ甘くて温かいな。
今は上司としてこの場にいるけれど、次は…恋人として食卓を囲めるようにしたいと思い、俺はお父さんから改めて注がれたビールを一気に飲んだ。
まさかこんな展開になるとは思わなくて、一度真琴の家を出て、祐一さんに電話を掛けようと思ったけど、直接駐車場に行き、車の運転席の窓ガラスを軽くノックをするとドアが開いて祐一さんが降りてきた。
「稔が酔いつぶれて、俺と一緒に宝条さんの家に一晩世話になる」
「稔の奴…。分かった、トランクに予備の着替えがあるから持っていって」
「ああ、ありがとう」
「仁君も稔の悪酔いにいつも付き合ってくれて、ありがとね」
「いい大人が大人に世話になって恥ずかしい」
俺は祐一さんがトランクから取り出した荷物を受け取り、ムスッとしながら言うと祐一さんは笑う。
「仁君に出会う前も稔の酔い方は変わらないし、俺も毎回巻き込まれて大変だった。いや過去形じゃないな、大変だよね」
「本当にそう」
「でも稔がいなかったら仁君が宝条さんのご家族にもっとキツく言われていただろうし、お酒も率先して飲んだりするのは稔なりの守り方だと思うよ」
「………それは感じた」
稔が真琴の家で会話の主導権を握ってご家族からの厳しい言い方を受け止めていたし、食事の場でもお酒を率先して飲んだりお酌をしていたし、いつも稔の人柄に助けられている。
「明日の朝6時に稔を叩き起こす」
「うん。この駐車場にネクタイを引っ張りながら連れてきて。後…」
祐一さんが俺の顔を真っ直ぐ見る。
「里香が四つ葉の君達を傷つけて…本当にご免」
深く頭を下げる祐一さんは、両手をギュッと強く握っている。
「頭を上げて」
祐一さんはゆっくりと頭を上げた。
「祐一さんを信じているから話すけど…、俺さ…」
「うん」
「宝条さんを…、真琴に怖い思いをさせた姪の橘さんを一生許すつもりは無い。それだけは分かって欲しい」
俺の言葉に祐一さんは目を見開く。
なんとなく祐一さんには俺と真琴のことを話してもいいと、長年の付き合いで感じたし、橘さんにはもう一生会わないけど、許すことは無いし、それだけは身内の祐一さんに話したかった。
「稔や宝条さんのご両親にはまだ俺達のことを話していないから、宝条さんが話しても良いよと言うまで秘密にして欲しい」
「勿論だよ。俺は稔の様に茶化さないし、仁君のことを本当の弟の様に感じているから、いつでも恋バナには相談に乗るよ」
「ありがと。もう戻る」
「また明日、この駐車場で」
祐一さんが精算機にお金を入れて車に乗り込み、走り去る車を見送って真琴の家に戻った。
こんな展開で真琴の家に泊まることになるとは思わなくて、和室に敷かれている布団に豪快に寝ている稔の姿にがっくりし、布団の側に祐一さんから受け取った着替えを置いて、俺も用意された着替えに替えていると、和室のドアが開いて真琴のお父さんが入ってきた。
「最後に一杯、どうですか?」
「一杯だけでしたら」
「勿論ですよ」
俺は真琴のお父さんと一緒にリビングに行こうと廊下を歩いていたら、お父さんが立ち止まって入ろうとせず、どうしたのかと思ったら、指で中を指したので、少しだけ開いているドアからそっと一緒に中を覗いた。
そこには真琴の姿があり、テレビにはいつも一緒に見ているスポーツのテレビ放送が流れていて、真琴は必死にペンをノートに走らせ、顔をテレビとノートに行ったり来たり動かしている。
お父さんは真琴の姿をじぃっと見つめ、目元が潤んでいた。
「ちゃんとやるべきことをする娘になったんですね」
「ええ、まだ漢字の誤字脱字が多いので本をもっと読むようにとは伝えています」
「恋愛小説を読んでいるのに、活かしきれてないな」
「これから伸びますので見守りますし、折角1週間あるので、2つ宿題を追加させます」
「良いですね。ビシバシと鍛えて下さい」
リビングの前で話しをしているとドアがバッと開かれて、真琴がペンを持ったまま俺達を見上げる。
「視線を感じるなって思ったら…、早く寝なよ!荒木編集長は明日も仕事なんだから!!」
「せめて最後の一杯だけ飲ませなさい」
「でも…」
「………」
真琴が俺の機嫌を伺うように見上げ、俺は黙って頷いた。
「一杯だけだよ、もう」
真琴は顔をぷいっと横に向け、キッチンに向かう。
真琴は冷蔵庫から瓶1本とグラスを2つ用意して、リビングのテーブルに置いて、3人で机を囲み、俺は注がれたビールを一口飲んで、グラスを置いた。
「荒木編集長は四つ葉にいるのはどれ位ですか?」
「もう11年になります。最初は高坂がー…」
俺は真琴のお父さんに四つ葉に入った経緯やスポーツ部での出来事をポツポツと話し、それを真琴は目をキラキラさせながら聞いている。
「5月号も楽しく読ませて頂きました。荒木編集長の企画の所は読み応えあって、素晴らしいです」
「ありがとうございます。その言葉が聞けるのが、編集者として1番嬉しいです」
「次の6月号も凄いんだよ。鷲尾さんという野球の用具係りを携わっている人のインタビューで、取材に同行をさせてもらったの。そこでねー…」
真琴が一生懸命にその時の様子を話し、それをお父さんはグラスに口をつけながら目を細め、飲んでいる。
なんだかこの空気というか、雰囲気って自分の実家とは違う温かさがあって、少しだけ甘くて温かいな。
今は上司としてこの場にいるけれど、次は…恋人として食卓を囲めるようにしたいと思い、俺はお父さんから改めて注がれたビールを一気に飲んだ。