スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◆自宅待機:1日目
side荒木仁

翌朝、真琴の実家を出たのは朝6時20分過ぎで、玄関先で3人から見送られた。

ご両親の後ろにいる真琴の表情は、寂しさよりもこれから1週間で自分の行動を見せるために決意を固めた表情でいる。

「一晩、お世話になりました。宝条さんはこの1週間で宿題を2つ。今週のスポーツのニュースを自分らしく纏めるのと、シンクロの調べ物をお願い。今週の何処かで進捗を見に来るから」
「うう…、分かりました」
「これからも娘をビシバシと鍛えて下さいね。またお酒も飲みましょう。昨日はスポーツのことを聞けて、とても楽しめました」
「こちらこそ、楽しい時間を過ごせました。そろそろ会社へ行くので、失礼します」

高坂さんが挨拶し、真琴の実家を後にして祐一さんがいる駐車場に向かい、祐一さんが運転席から降りてきた。

「酒の匂いが残っている。しっかりシャワーで洗ってこい。仁君もお世話をありがとう」
「豪快に寝ていて、いびきも煩かった」
「あんだけ飲んでいたし、しょうがないだろ」

3人で車に乗り込み、駐車場を後にして車が住宅街を走り、俺は助手席に座り、高坂さんは後部座席でネクタイを解いてYシャツのボタンを3つ外した。

「ふわぁ〜、会食以外のお酒の場はほのぼのとして良いね」
「俺の代わりに酒を飲んでくれて、ありがと」
「どーいたしまして。上司としての役目だし、2人で酔いつぶれるより良いだろ」
「酔いつぶれて会社の部下の家に世話になるのは、どうかと思うぞ」

俺の隣で運転する祐一さんは呆れていて、俺だってまさか泊まることになるとは思わなかったが、真琴がご両親の愛情を一杯に受けて育っているのは分かったし、リビングでスポーツのテレビ放送のノート書きをしていた姿勢を見れたのも嬉しかった。

俺は南◯駅に送ってもらい、そこから電車でシェアハウスの最寄り駅に移動し、駅についてシェアハウスに戻る。

シャワーを浴びてリセットし、新しく服に着替え、適当に朝ご飯を済ませ、また駅に向うけど、真琴がシェアハウスにいないだけで食事は適当になるな。

小さく息を吐いて、電車に乗り、気分を仕事モードに切り替え、今日の仕事をスケジュールを確認し、藍山駅から四つ葉に向かう途中、信号待ちの水瀬がいた。

「はよう」
「おはよ」
「昨日、高坂さんと一緒に宝条さんの家に行ってきた」
「ご両親の反応は?」
「厳しい言い方をされたけど、スポーツ部や本人の言葉を聞いて最後は納得した。後は宝条さんが行動で示す」
「親ならそう反応するよね。俺も部下とのコミュニケーションの取り方を考えたよ」

信号が青になり、2人で歩く。

「高坂さんがいなきゃもっと厳しく言われたし、お酒もかなり飲まされてたと思う」
「え?お酒も勧められたの?」
「最初はご両親がどうしてもって夕飯をごちそうになって、その時に高坂さんが俺の代わりにお酒を飲んだりお酌を率先して、最後は高坂さんが酔いつぶれたから一晩ご実家に世話になった」
「あらら」

俺がうんざりしながら答えると、水瀬は苦笑する。

「水瀬の言う通り、最初は1杯しか喉が通らなかった」
「でしょ?急だったとはいえ、部下の家でお世話になるなんて、仁も大変だね」
「うん、まぁ…」

水瀬は俺と真琴のことを上司と部下として見ているから仕方ないけど、いつ言うべきか…、まだ真琴の意思を確認していないし、こういうのって難しい。

「俺なんて妹が恋人のことを凄く慕っていてさ、初めて家に連れて来たときはずっと隣を独占されて切なかった」

水瀬はしょんぼりしながら歩き、その時のことを話す。

「自分の大切な人を家族に紹介するって緊張するし、お酒も全然飲めていなかったけど、最後は『この温かい雰囲気がとても良かった』と言ってくれてホッとした」
「その雰囲気は分かる」

俺も上司と部下として伺ったけど、真琴の家の雰囲気は少し甘くて温かくて、もっといたいと思えたくらいだ。

四つ葉のビルに入り、階段を上がる。

「今日の夜っていつものBarに来ない?久しぶりに仁と話したいし、最近の事もあったから気分転換にどう?」
「いいよ。見たいスポーツのテレビ放送に間に合うように帰りたいから、それでも良い?」
「問題ないよ。時間をくれてありがとね、じゃあ夜に」
「ああ」

水瀬と2階の階段で別れ、俺も3階へと移動した。
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