スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

真琴が自宅待機になって3日目、今日は木曜か…、まだ日もあるし、入院の時とは違い、キッチンにいてもリビングで過ごしても1人の空間ってこんなにも広く感じるし、真琴との生活が基準になりつつあって、“寂しい”が勝る。

真琴がシェアハウスに来る前の5年間は1人の空間は慣れていたけど、真琴が来てからは最初は上司と部下としての同居人だったのに少しづつ過ごすうちに好きになって、今じゃリビングや俺の部屋で一緒に過ごすのが当たり前になっているもんな。

真琴がいないだけで一体幾つの溜め息を吐いたか分からないなと思いながらクローゼットに向かい、いつもの白シャツに着替えて朝食は食べずにシェアハウスを出た。

『朝ご飯を一緒に作りませんか?』

ご飯も適当になりつつあって、コンビニで済ますか、チェーン店でさくっと食べるのが多く、早く真琴の手料理が食べたい。

黒パンツの後ろポケットにしまっているスマホが揺れたので取り出すと、亮二からのメッセージで朝から何だよと画面をタップする。

『今日の夜、飯に付き合えよ。ひよっこに愛想つかされたんだろ?慰めてやる』

秋山の奴…話したなと思い、絶対に真琴の事をいじってくるのが浮かび、今夜も真琴との時間があるし、お酒は控えておきたいからアルコール無しのお店のチェーン店で提案しよう。

『絶対にお酒を飲みたくないから、牛丼のチェーン店にして』
『良いぞ。仕事が終わったら連絡する』

亮二とのやり取りを終えて四つ葉に行き、3階に移動して専務室に行くと、高坂さんと祐一さんがいて、やっぱこの2人の光景が落ち着くな。

「明日、宝条さんの宿題の採点をしに実家に行く」
「真面目に過ごしてるねぇ。俺だったら2日目から自由だぁ~で、遊びに行くよ」
「高坂さんと一緒にしないで」

俺がムスッと返事をすると、秘書の席にいる祐一さんが笑う。

「稔だったらやるだろうし、なんなら海外にでも行くんじゃないか?」
「海外かぁ~、良いね」
「本当に行きそうだから、言わなくていい。それと、宝条さんが言っていた件を了承してくれてありがとう」
「真面目に自宅待機をしているし、せめてね。井上監督に会うのも久しぶりだから、時間を見つけて演技の映像を観ておくよ」
「ああ、また土曜に」

専務室を出て、会議室に行くと秋山がいたの手招きして廊下に2人で出た。

「亮二に宝条さんのことを話した?何故か愛想つかされたんだろって言われたんだけど?」
「詳細はひと言も言ってません。1週間自宅にいるって話しをしただけです」
「それならいいけど。亮二と色々話せた?」
「主にパーツの話とシンクロで撮影したいアングルの話をしましたけど、手の内をみせてこないので土曜の時に全部吸収するつもりで撮影の姿を見ます」
「俺だって亮二を口説くのに時間がかかったから、カメラの技術は相当時間を要するよ」
「上等です。三輪さんの“自分の目”、俺は凄く好きなんでとことん追いかけますよ」

秋山は嬉しそうに亮二のことを話すので、きっと秋山にとっては師弟関係になりそうだな。

「水野はあれからどう?」
「今は落ち着いてますが、追いかけた時は静かに泣いてました」
「そっか…」

真琴を在庫室に閉じ込めたのが想いを寄せていた橘さんで、それを知った水野の気持ちはきっと想像以上にショックだったろうし、手を挙げるのも心の方が左手よりも痛かっただろう。

「俺は今の所、あまり恋愛に興味は無いですが、大切な仲間が泣いているのは辛かったですよ。恋愛って何なんですかね」
「………色々な形の恋愛があるし、水野や秋山にもいつか“凄く大切な人”と想える人に出会えるよ」
「俺は今はカメラが大切ですよ。荒木編集長はいるんですか?“凄く大切な人”が」
「……………宿題、出されたい?」
「絶対に嫌です!もう戻ります!」

俺の言葉に秋山は体をビクッとさせて慌てて会議室に入り、俺ははぁ…と溜め息を吐く。

「“凄く大切な人”…いるに決まってるだろ」

ボソッと言い、会議室に入った。
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