スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「仁って何を着ても様になるな」
「でしょ?ジャケットが黒だし、インナーは普段とは違う色で魅せたいな。こっちの水色は?」
「いい思い出じゃないから嫌だし、早く終わりにしたい」

暫く水色は避けたいし、はっきり言わないと伝わらないから早く終わりたいと言った。

「意外性としてこっちの薄いパープルのシャツは?」
「いいじゃん、水瀬に見せてジャッジしてもらおう」
「水瀬を巻き込まないで」
「早く着替えてみようよ」
「はぁ…」

俺は祐一さんから差し出されたシャツを受け取り、一度ジャケットを脱いで白シャツを脱いで薄いパープルに着替え、またジャケットを羽織ると、2人は満足気に微笑み、高坂さんが俺の右腕を左手でガシッと掴み、専務室を出て行く。

「水瀬達は仕事中だし、俺も原稿を書きたいんだけど」
「つまんないなぁ。この姿を見た四つ葉の女性社員達の反応を見たいんだよね」
「勝手にして」

もう何を言っても無駄だと感じ、階段で2階に降りて、高坂さんがICカードを使って編集部のドアを勢いよく開けた。

「ねぇ水瀬〜、荒木の服装をジャッジしてよ」

それと同時に編集部にいる社員が一斉に俺達の方に顔を向け、水瀬は耳に当てていた受話器を落として口をぽかんとし、女性社員達は手に持っていたファイルや雑誌をドサッと落とすわ、ファッション部の姫川は目を見開いていて、九条さんは両手で口を押さえながら俺達を見る。

水瀬はハッとして慌てて受話器を持ち直して電話口の相手に謝罪して受話器を置き、他の社員達もおろおろしながらファイルを拾い、水瀬がこっちに来た。

「普段の仁も格好いいけど、ジャケットも凄く似合っているし、シャツの色合いも良いね」
「でしょ?」
「高坂さんがドヤ顔しても意味がないし、もう会議室に行きたい」
「女性社員達の反応も良いし、今後は白シャツ以外も着ろよ」
「着せ替え人形じゃないし、服装は自分で決めたいから今日だけにして」

俺がうんざりしながら言うと、水瀬は苦笑する。

「仁が自分で選んだんじゃなかったんだ」
「秘書の橘さんの私服」
「へぇ、このインナーのシャツってメンズブランドの“S”の新作だし、良い生地を使うから長く着られるし、俺も幾つか色違いで持っているよ」

水瀬は生き生きとした表情でファッションの事を話すけど、本当に会議室に行きたい。

「もう良い?原稿を進めないと、7月号が出せない」
「それは困るけど、いやぁ~何を着ても様になるのは罪な男だね」
「それを言う高坂さんは嫌な男だな」

俺はぷいっと横に向け、思いっきり溜め息を吐いた。

「これ以上は仁がご機嫌斜めになると一緒に飲めなくなるから、高坂さんも仕事に戻って」
「へいへい。じゃあみんな、仕事を頑張ってね〜、じゃ」

高坂さんは空いている手をひらひらさせて俺と編集部を出て行き、一緒に専務室に戻っていった。
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