スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「ここがシェアハウスだったら良いのに」
「……それを言われると甘えたくなります」
「頑張って我慢するけど、今は“こう”したい」

仁さんの大きな左手が頭から離れ、私の右手を優しく包む。

「自宅待機中、何度も真琴が作る料理を食べたいって思っていたから、戻ってきたら一緒に作りたい」
「久しぶりに炒り玉子を作りたいですね。勿論…」
「ケチャップ付き」
「ケチャップ付きで」

2人同時に答え、私はふふっと笑い、仁さんも口元が笑っている。

大きな右手が私の手からそっと離れ、仁さんは私物のバックを手にして立ち上がるので、私も一緒に立ったら、足の痺れでクラっと体が傾いたので仁さんが左腕で私の体を支えた。

「おっと」
「す、すいま…、」
「頑張って我慢していたのに…」

仁さんは私物のバックを和室の畳の上に置いて、私をそっと抱きしめる。

「じ、仁さん」
「昨日、亮二に挑発された」
「何て言っていたんですか?」
「『自分の腕の中に収める』って言われて、ムカついた」

抱きしめる腕の力が増して、丁度私顔の辺りに仁さんの胸の辺りになるので久しぶりに聞く心音が心地よくて、瞼を閉じる。

「これ以上、ギュッとすると色々とヤバいから終わり」

腕の力が弱くなって体の距離が開いて、仁さんはジャケットを改めて整えた。

「今日の仁さんの服装、凄く格好いいです」
「インナーのシャツは橘さんの私物で、いきなり着替えさせられた」
「何を着ても格好いいです」
「……ありがと」

私は笑顔で仁さんを見上げると、仁さんも口元がフッと笑い、私物のバックを持って和室の襖を開け、一緒にリビングに行く。

「明日、午前11時に真琴の実家の最寄り駅に来て。橘さんが車で迎えに来るって」
「分かりました。見学、楽しみにしてます」
「ああ、俺も」

私はリビングのドアを開けると、お父さん達が晩酌をしていて、顔が赤い。

「荒木編集長が帰るから、玄関先で見送って来るね」
「美味しい夕食をありがとうございました」
「今日も泊まっていけば良いのに」
「流石に明日もあるので」
「困らせないでよ!もう」

お父さんはおちょこを持ちながら仁さんに言うけど、今日も泊まったら明日も見学があるし、ゆっくりさせてあげたいし、も〜。

「また美味しい食事を楽しみにします。その際は高坂も」
「ええ、是非。真琴がお見送りしなさい」
「勿論!」
「でわ、失礼します」

仁さんが改めてお父さん達に挨拶をして、2人で玄関先に行く。

「ここに来るときは暫くは上司と部下として振る舞う」
「もう少しだけ私達の事は秘密ですね」
「恋人として挨拶する時は、お父さん達はどうなるかな」
「お母さんは発狂するくらい喜ぶと思いますが、お父さんだけは想像がつかないです」
「父親としては色んな感情が出そうだな」

暫くはこの家に来る時は上司と部下としての振る舞いになるけど、恋人として仁さんが来たらお父さんとどんな会話をするんだろうか、想像するだけで楽しい。

「また明日」
「はい、あ…」

仁さんが玄関のドアを開けて出て行こうと体の向きを変えていたら、急に仁さんが遠くに行きそうな気がして、思わずジャケットの裾を掴んだ。

仁さんは顔だけ振り向くと、私は顔を見上げる。

「えっと、急に掴んですいません」
「気にしてない。明日の準備もあるから、お休み」
「はい…」

そっと手を離し、仁さんは改めて玄関を出ていったけど、ざわついた気持ちになるのはなんでだろうと、暫く玄関に立ち続けた。
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