スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

真琴の実家を出て時間制の駐車場に行き、1台の車に近づくと運転席のドアが開いて、祐一さんが降りてきた。

「酔い潰れなかったんだね」
「稔と一緒にしないで欲しい」

俺は顔をぷいっと横に向け、思いっきり溜め息を吐いた。

「それは失礼。何処まで送ればいい?」
「南◯駅」
「良いよ。行こうか」

俺は財布を出して自販機で缶珈琲を2本を買って小銭を作り、駐車場の代金を精算して助手席に乗り、祐一さんも運転席に乗り込んで車が発進した。

「駐車代金、ありがとう」
「送ってもらっているから、代金を払うのは当たり前」

俺は助手席と運転席の間にあるカップホルダーに缶珈琲を2本置いて、左側の方に顔を向けて外の景色を眺める。

「宝条さんの様子はどうだった?」
「俺が出した宿題2つを取り組んでいたし、稔の様に遊んではいなかった」
「稔は本当に遊ぶ奴だけど、要領よくやるからな」
「宝条さんは社会人1年目だし、がむしゃらにやるのは仕方ない。いつか自分のスケジュールをどうするかのタイミングが分かってくると思う」
「そうだね」

車がどんどん進み、車が高速道路へ進む。

「少しドライブをしようよ」
「良いけど、明日の見学の準備があるから短くして欲しい」
「うん、そんなに長くはしないよ」

高速道路を走行していると、道路は車が少ないのでスムーズに進む。

「里香は来週から西日本に住んでいる俺の親の所に行く事になって、もうこっちには現れないから安心して」
「ふ〜んって感じ」

前に姫川が言っていた言葉をそのまま借りて言うと、祐一さんはハハッって笑う。

「このシャツ、週明けに返す」
「いつでも良いよ。宝条さんの反応は?」
「…………………格好いいって」

俺がかなりの間を開けて答えると、祐一さんはクスっと笑う。

「でしょ?白シャツも良いけど、恋人の家に行くんだからお洒落は大事だよ」
「それはそうだけど、着せ替え人形じゃない」

俺は缶珈琲のプルを2本分を開けて1本を一口飲み、専務室で強制的に連行されてあーでもないこーでもないと着せ替えられて苦痛だったし、四つ葉の編集部の皆にも注目されて、稔のノリも嫌だった。

「宝条さんのご両親に挨拶に行く時は、ちゃんとしたスーツを仕立てないとな。良いテーラーを知っているし、その時は紹介するよ」
「挨拶だなんて気が早い」
「そうかな?のんびりしてたら、誰かに奪われるよ」

ふと亮二の顔が浮かび、『次は遠慮せずお前からひよっこを奪いに行く』というムカつく言葉も思い出した。

「亮二なんかに真琴を奪われたくないから、明日も目を光らせる」
「稔からよく会話に出てくる、あのカメラマンか」
「あと真琴の同級生に、芹澤っていう男性アナウンサーがいる」
「ライバルが2人もいるの?」
「後はサッカーの石井選手」
「宝条さんって、もしかして色んな男性から好かれるタイプ?」

祐一さんは缶珈琲をぐびっと飲む。

「だから目を光らせているし、俺のだって証明したくて、先週初めて一線を越えて、抱きまくって体に赤い痕をつけた」
「グッ…ゴホ…、ゲホッゲホッ」

俺がそう言うと祐一さんは蒸せて、何度も咳をする。

「汚い」
「いや、だってそれを聞いたら誰だってこういう反応になるって」
「普通に話をしているだけなのに」
「仁君に初めて会ったのは君が高校生だったのに、いつの間にか成人して、稔の後任で編集長になって、恋をする人になったんだね」

恋をする人か…、大学1年の元カノの時は恋だと全く呼ぶ物じゃ無いし、真琴に出会う前までは自分から誰かを好きになることも1ミリも無かったし、ずっと傍にいたいと想える人は真琴だけ。

「何があってもずっと真琴の傍にいるって決めているし、ただ、亮二だけは他の2人の男よりも警戒している」

芹澤と石井選手より、俺達に会う機会の多い亮二はこれからも真琴に対して接触はしてくると思うし、姫川も俺に警告をしてたな。

「俺も君達2人を気にかけるし、稔に言いにくいことがあったらいつでもスマホに連絡して」
「ありがとう」

車が南◯駅に到着して助手席を降りようとシートベルトを外して、ドアノブに手をかける。

「仁君」
「どうした?」
「あ…いや…、明日もお迎えを任せてよ」
「うん、秋山と亮二は現地集合だから、俺と稔と真琴の3人になる」
「分かった。また明日」

降りようとしたら祐一さんに呼び止められたけど、明日のお迎えのことかと思い、普通に受け答えて祐一さんと別れ、俺は電車でシェアハウスの最寄り駅に向かって行った。
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