スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
ノートに、ペンケース、何度も書き直した擬似的インタビューの用紙をバックに入れて自分の部屋から出て階段を降り、リビングに行く。

「これから荒木編集長達とシンクロの見学に行ってくるね」
「しっかり見てくるんだぞ」
「うん!行ってきます!」

お父さん達に挨拶をして家を出て、待ち合わせ場所として決めた駅に向かった。

昨日も自分の部屋でシンクロの映像を幾つか観て、今日は初めて演技を見学させて貰えるから、この2時間を大事に使って目に焼き付けよう。

駅前のロータリーに着いて、仁さん達が来るのを待っていると、1台の黒い車が停まって後部座席のドアが開くと仁さんが降りてきた。

「おはようございます!」
「はよう」

助手席には高坂専務が座っていて、ニコッと微笑みながら私に手を振っていたので、私もニコッと微笑み返す。

「秋山がもうすぐ現地に着くって連絡が来たから、俺達も行くから奥に座って」
「はい」

仁さんが後部座席のドアを開けて中に入るように促してくれて、私は失礼しますと先に後部座席の奥に座り、仁さんも続けて入ると後部座席のドアを閉めた。

「じゃあ、行きますか」
「任せて」

高坂専務の号令に秘書の橘さんが返事をすると車が動き出し、今日のシンクロの見学をする施設に向けて走り出す。

「宝条さんは自宅待機中にどう過ごしていた?」
「宿題を2つ出されて、1週間のスポーツのニュースの纏めと、見学させて頂くシンクロの擬似的インタビューの原稿を作っていました」
「え?!仁って2つも宿題を出したの?」

高坂専務が私に自宅待機中にどう過ごしていたかを聞かれたので、正直に答えたら高坂専務は驚いてるけど、この宿題をやってみてどっぷりとスポーツのニュースに触れられたし、インタビューも自分だったら読者に向けてどう質問したら相手が答えてくれるか練習にもなったし、仁さんや高橋先輩のインタビューの原稿を読ませてもらえたし。

「折角1週間もあるし、時間を活用して欲しかったから出した」
「俺なら2日目から遊びに行っちゃうし、せめて宿題無しにしなよ。“自由研究”とか“自主学習”でテーマを決めさせれば良かったのに」
「でも荒木編集長と高橋先輩のインタビューの原稿を読む事が出来たので、私は良かったですよ?すっごく参考になりました!」

高坂専務に宿題に対する思いを伝えたら、私の左手がギュッと強く握られた感触があって、バッと顔を仁さんの方に向けると、仁さんは左側の方に顔を向けている。

私はちらっと視線を左手に向けたら、仁さんの大きな右手が私の左手を包んでいて、うう、高坂専務や運転をしている橘さんに気づかれないようにしなきゃ。

私も顔を右側に向けるけど、見学させてもらう施設に着くまで、仁さんはずっと私の左手を包んでいた。
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