スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side三輪亮二

仁の病室を出て、病院を出て喫煙スペースに行き、1本タバコを嗜みながらプールサイドでの出来事を振り返る。


俺の腕の中でひよっこが何度も鼻を啜りながら泣き続け、バタバタと足音が聞こえたので俺は顔を向けると救急隊員達が入って来たので腕の力を緩めた。

「あっちに横たわっているのが落ちた人か」
「酸素ボンベは満タンだから、気道を確保しよう」
「おう」

隊員達がテキパキとびしょ濡れの仁を処置していて、白シャツをハサミできり裂いて心臓マッサージを繰り返しながら仁に呼びかける。

「心臓マッサージを続けますよー!押します!1!2!3!人工呼吸をお願い!!」
「すぅ…」

救急隊員が仁に人工呼吸を繰り返すと、仁が体をよじろうと反応する。

「そうです!こっちの世界に戻ってください!」
「少し胸を強く押して!水が出てくるかも」
「分かった!」

必死に心臓マッサージや胸に当たりに体重をかけていくと、仁の体がビクッと跳ね、隊員が仁の顔の向きを変えて俺たちには見せないようにした。

「良かった、水が出てきた。水を出し切りたいのでマッサージを続けますよ!酸素ボンベの濃度はどう?」
「大丈夫。成人男性だから、もう1本の予備も備えてある。あ、気づきました?まだ水を出すので我慢してください」

隊員達がマッサージを続ける様子を見て、俺はホッとしてひよっこの腕を取り、ひよっこのバックを取って、プールサイドのドア前に立っている秋山の元に行く。

「仁は大丈夫だ。お前は着替えて来い」
「はい…」

秋山は顔が青ざめながら自分の荷物を持ってドアを開け、着替えをする更衣室に向かって行くと救急隊員がこっちに来た。

「ストレッチャーを取りに行くので、申し訳ございませんがそれまで患者の側にいて下さいませんか?」
「わ、私が側に付き添います!」
「お願いします。俺達もストレッチャーを取りに行くぞ」
「ああ」

隊員達がバタバタと走り去り、俺はひよっこの腕を離す。

「隊員達が戻るまでだぞ」
「ありがとうございます!」

ひよっこは俺の元から離れて仁の所に駆け寄って、仁の側にしゃがむ。

俺は隊員達や秋山がこの2人の空間を邪魔しないようにドアを見張るため、ドアを開いて背をプールサイドの方に向けて立った。

少し気になって顔だけ振り向くと、仁が右手でひよっこの頭に手を置いて、ひよっこが顔を仁の方に近付け…、それ以上は見るのも胸糞悪いから顔を元の位置に戻し、思いっきり溜め息を吐いてドアを閉める。

くそ…と思っていたら着替え終わった秋山が来たので、俺は秋山の肩に腕を回し、つかつかとドアから離れた。

「荒木編集長は?」
「息を吹き返したし、隊員が来るまでお前が撮った写真を見せてくれよ」
「良いですけど…、宝条さんは一緒じゃないんですか?」
「いーから、あっちの椅子に座って見せろって」
「は、はぁ…」

秋山とドアからかなり離れた椅子達が置かれているスペースに来て、お互い一眼カメラを出して写真を見せ合い、秋山も腕をあげてきたのが分かる。

「この水中のやつ、良いな。どんなパーツを使ってんの?」
「教えても良いですけど、サシでカメラの練習に付き合って下さいよ」
「何で男とデートしなくちゃいけねぇんだ」
「そういう意味で言ってません」
「つまんねぇ奴だな」
「荒木編集長とはよく2人でいるじゃないですか」
「仁と好きで一緒にいるわけじゃねぇ。俺に縦に振って欲しければ、時間かけて誘ってみれば?」

仁が俺の写真を欲しがっても簡単に縦に振らなかったし、秋山にだって簡単に手の内を見せるかよ。

「上等です。前に荒木編集長にも似たように言われたので、絶対縦に振って貰いますから」
「楽しみにしてる」

廊下の奥からストレッチャーを押しながら走ってくる救急隊員が見え、俺達は立ち上がってプールサイドのドアを開けると、救急隊員がストレッチャーをプールサイドの中に入れて横たわっている仁の側に置くと高さを低くし、二人がかりで仁を持ち上げてストレッチャーに乗せた。

「◯◯病院に行きます」
「お願い…します」

ひよっこは小さな声で返事をし、運ばれる仁の姿をじっと見ていて、秋山も同様に見送り、俺は秋山を四つ葉に帰らせ、ひよっこは専務の秘書の男に連れられ、俺も仁の状態が気になっていたのでバイクで病院に向かった。
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