スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
プールサイド内の事を振り返り、喫煙所で吸っていた煙草が短くなり、灰皿に捨ててもう1本と思って箱から取り出して火を点けた。
長めに吸い、口から煙草を離して空に向けて長く煙を吐くと、白い煙は風で横に流され、消えていく。
『真琴に俺が落ちた所を見せないようにしてくれて、ありがとう』
今までひよっこの事は苗字で呼んでいたくせに、下の名前呼びかよ、ムカつくな。
煙草を吸い終えて灰皿に投げ捨て、バイクの方に行くと四つ葉の専務が椅子に体を預けていた。
「椅子に座ると使用料を取るぞ」
「これは失礼」
専務は椅子から降りる。
「宝条さんや秋山に付き添ってくれてありがとね」
「2人分はしんどい」
「しんどくても最後まで付き添うのが、三輪っちの優しい所じゃん」
「けっ」
俺はバイクのハンドルにかけているヘルメットを手に取る。
「秋山のカメラはどう?」
「良いんじゃね?去年よりもブレが少ないし、田所といい勝負になっているが、俺と仁の所まで来るにはまだだな」
「三輪っち達の所まで行くにはまだ先かぁ」
「当たり前。そう簡単に来てたまるかよ。仁から表紙の指名を貰えって言った」
「まぁね。簡単に来られちゃ天狗になるもんね」
「お前こそ、ひよっこに容赦なく駄目だししてんだろ」
俺はヘルメットを被り、バイクに跨る。
「それこそ1人前になるように厳しくするのは初心者であっても関係ないし、これでも“Scoperta”を創った1人だからね」
「出入りが激しいスポーツ部によく入ったな」
「面接でさ何処の雑誌に携わりたい?って聞いた時にすぐ“Scoperta”を言ってさ、荒木の記事を読んで『この人の文章に惹かれたので、その人の側で書きたいです』って言ったんだから、そりゃ採用を落とす訳ないでしょ?」
成る程ねぇ、何でひよっこみたいな女がスポーツ部に所属してんだろと思ったが、仁の文章に惹かれたのか。
「カメラなんて、高橋や佐藤の所に来るまで相当時間がかかるぜ」
「だから、三輪っちの“自分の目”がうちに必要なんだよ」
専務がニコッと微笑んでいるが、どっちの意味で笑ってんだと思いながら、エンジンの鍵をかける。
「そろそろ“顧問料”を請求するぞ」
「わぁお、それは困るな。今さ、“休刊”の対象になるかもしれないし、それを阻止したくてノルマ3ヶ月をクリアしないといけないから、請求は待って欲しいな」
「は?」
「え?」
お互い顔を見合せ、俺はエンジンの鍵を抜いて、椅子から降りてヘルメットを外す。
「“休刊”の対象ってなんだよ」
「あれ?荒木から聞いてないの?」
「………聞いてねぇ」
「ご免、てっきり話しをしているものだと思ってた」
「なぁ、あいつを殴りに戻っていい?」
「今日は安静にさせないと駄目だから、明日にすれば?」
「殴っていいのかよ」
「良いんじゃない?荒木だって三輪っちが飛び込み台にいる時に『落ちて一度痛い目に合えば良い』って」
あいつ…、
「明日もう一度、左手をお見舞いする」
「じゃ、任せたよ〜」
専務は手をひらひらさせて立ち去り、俺は仁がいる病室の窓を見上げる。
“休刊”だなんて、俺には言わずそういう素振りもなく雑誌の話しを淡々としていたのかよと、苛つきと寂しさが混じり、ひよっこの顔が浮かんだ。
もし“休刊”になったらあいつは四つ葉に来る意味が無くなって、俺との接点も無くなるのか…、それは断じて嫌だな。
先ずは明日、仁に胸倉掴んで話しを聞くしかねぇ。この前は喉を思いっきり掴まれたし、くそ…、ヘルメットを被って椅子に跨り、エンジンをかけて、道路をひたすら走り出す。
走り出して着いたのが赤い電波塔を眺められる公園で、バイクのエンジンを停めてヘルメットを外して椅子から降りた。
バックから漆黒の一眼カメラを取り出して、液晶画面を操作して、1枚の写真に視線を落とす。
俺が見るのはムスッとした顔か、泣いている顔が多いのに……。
「もっとこの顔を俺に見せろよ」
液晶画面に映っていたのは、プールサイドのベンチで仁と楽しそうに話す、ひよっこの笑顔だった。
長めに吸い、口から煙草を離して空に向けて長く煙を吐くと、白い煙は風で横に流され、消えていく。
『真琴に俺が落ちた所を見せないようにしてくれて、ありがとう』
今までひよっこの事は苗字で呼んでいたくせに、下の名前呼びかよ、ムカつくな。
煙草を吸い終えて灰皿に投げ捨て、バイクの方に行くと四つ葉の専務が椅子に体を預けていた。
「椅子に座ると使用料を取るぞ」
「これは失礼」
専務は椅子から降りる。
「宝条さんや秋山に付き添ってくれてありがとね」
「2人分はしんどい」
「しんどくても最後まで付き添うのが、三輪っちの優しい所じゃん」
「けっ」
俺はバイクのハンドルにかけているヘルメットを手に取る。
「秋山のカメラはどう?」
「良いんじゃね?去年よりもブレが少ないし、田所といい勝負になっているが、俺と仁の所まで来るにはまだだな」
「三輪っち達の所まで行くにはまだ先かぁ」
「当たり前。そう簡単に来てたまるかよ。仁から表紙の指名を貰えって言った」
「まぁね。簡単に来られちゃ天狗になるもんね」
「お前こそ、ひよっこに容赦なく駄目だししてんだろ」
俺はヘルメットを被り、バイクに跨る。
「それこそ1人前になるように厳しくするのは初心者であっても関係ないし、これでも“Scoperta”を創った1人だからね」
「出入りが激しいスポーツ部によく入ったな」
「面接でさ何処の雑誌に携わりたい?って聞いた時にすぐ“Scoperta”を言ってさ、荒木の記事を読んで『この人の文章に惹かれたので、その人の側で書きたいです』って言ったんだから、そりゃ採用を落とす訳ないでしょ?」
成る程ねぇ、何でひよっこみたいな女がスポーツ部に所属してんだろと思ったが、仁の文章に惹かれたのか。
「カメラなんて、高橋や佐藤の所に来るまで相当時間がかかるぜ」
「だから、三輪っちの“自分の目”がうちに必要なんだよ」
専務がニコッと微笑んでいるが、どっちの意味で笑ってんだと思いながら、エンジンの鍵をかける。
「そろそろ“顧問料”を請求するぞ」
「わぁお、それは困るな。今さ、“休刊”の対象になるかもしれないし、それを阻止したくてノルマ3ヶ月をクリアしないといけないから、請求は待って欲しいな」
「は?」
「え?」
お互い顔を見合せ、俺はエンジンの鍵を抜いて、椅子から降りてヘルメットを外す。
「“休刊”の対象ってなんだよ」
「あれ?荒木から聞いてないの?」
「………聞いてねぇ」
「ご免、てっきり話しをしているものだと思ってた」
「なぁ、あいつを殴りに戻っていい?」
「今日は安静にさせないと駄目だから、明日にすれば?」
「殴っていいのかよ」
「良いんじゃない?荒木だって三輪っちが飛び込み台にいる時に『落ちて一度痛い目に合えば良い』って」
あいつ…、
「明日もう一度、左手をお見舞いする」
「じゃ、任せたよ〜」
専務は手をひらひらさせて立ち去り、俺は仁がいる病室の窓を見上げる。
“休刊”だなんて、俺には言わずそういう素振りもなく雑誌の話しを淡々としていたのかよと、苛つきと寂しさが混じり、ひよっこの顔が浮かんだ。
もし“休刊”になったらあいつは四つ葉に来る意味が無くなって、俺との接点も無くなるのか…、それは断じて嫌だな。
先ずは明日、仁に胸倉掴んで話しを聞くしかねぇ。この前は喉を思いっきり掴まれたし、くそ…、ヘルメットを被って椅子に跨り、エンジンをかけて、道路をひたすら走り出す。
走り出して着いたのが赤い電波塔を眺められる公園で、バイクのエンジンを停めてヘルメットを外して椅子から降りた。
バックから漆黒の一眼カメラを取り出して、液晶画面を操作して、1枚の写真に視線を落とす。
俺が見るのはムスッとした顔か、泣いている顔が多いのに……。
「もっとこの顔を俺に見せろよ」
液晶画面に映っていたのは、プールサイドのベンチで仁と楽しそうに話す、ひよっこの笑顔だった。