スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

ベットから起きて真琴とメッセージをやり取りしていて、スマホに受信した真琴からのメッセージを読み、『秘密です』ってなんだ、益々気になる…、でもインタビューの原稿をやり直しをして、やれることをやろうとする姿勢は良いことで口元が緩む。

「なんだか嬉しそう」

ベットの側に置かれている机の上にある果物の盛り合わせから葡萄をバクバク食べている三斗が、俺の方に顔を向けている。

「遠慮なく食べているな」
「だって今日は兄ちゃんは食べれないし、勿体ないじゃん。稔が持ってきた果物は外れがないから、全部俺が持って帰っていい?」

三斗が次々と葡萄を口に含み、他に稔が選んだ果物を物色していると、ドアがノックされ稔が入ってきた。

「よっ、具合はどう?」
「少し良いし、個室にしてもらってありがと」
「良いって。悪いけど、仁と話しをしたいから5分だけ2人きりになっても良い?」
「良いけど」

三斗が蜜柑を1つ手に取って病室を出て行き、稔がつかつかと俺に近付いて右手でベシっと俺の頭を叩く。

「痛いし、頭を叩くの2回目」
「皆を不安にさせたんだから、一発お見舞いしても良いだろ」
「………ご免」

稔は溜め息を吐いて、パイプ椅子に座る。

「生きていて良かった」
「簡単にあの世にいってたまるかよ」
「まぁな。先に逝ったら嫌だし、仁の文章を読めなくなるのがもっと嫌だね」
「井上監督や選手達は?」
「選手達のメンタルケアも専用のカウンセラーがいるから平気だろう。井上監督もお前の身を案じていたし、また取材に来るのを待っているって」
「そっか…」

素晴らしい演技をしてくれたのに、俺の不注意で迷惑をかけてしまったな。

「秋山も宝条さんも三輪っちが面倒を見てくれたよ」
「亮二から様子は聞いた」
「あ、後さ、三輪っちに“休刊”の事を話していなかっただろ?」
「していない」
「さっき三輪っちと話している時に流れで俺が言ったら、三輪っちはムスッとして、『明日もう一度左手をお見舞いする』ってさ」

亮二に“休刊”の事を話していなかったのは故意ではないし、明日も来るのか。

「俺はさ、フリーだけど三輪っちも大事なメンバーだと思っているから、仁はもう少し人との付き合いを大事にしないと駄目だよ」

大事なメンバーか…、亮二が撮る写真に目を向けてばかりだったな。

「いいメンバーが揃って来ているし、もう少し関わり方を考える」
「でしょ?」

稔は椅子から立ってドアに向かうと、顔だけ振り返る。

「スポーツ部の編集長は仁しか務まらないから、しっかり休め」
「ああ、退院したら井上監督に会いに行く」
「俺も付き添うし、また明後日」

稔は手をひらひらさせて病室を出て行き、入れ替わりで三斗が入って来てパイプ椅子に座る。

「稔、少し落ち込んでた」
「俺のせいだし、三斗もお店の事もあったのにすまん」
「店くらい休んだって痛くないし、兄ちゃんの方が大事だろ」
「一美や親父達は?」
「姉ちゃんは荷物をシェアハウスに取りに行って、親父達は兄ちゃんが寝ている間に顔を見に来て安心して帰って行った」
「そっか…、色んな人に心配されてんだな」
「まぁね。後は宝条さんは兄ちゃんの顔を見ずに帰ったけど『私は平気です!原稿を書いて採点をしてもらいます』だって」

真琴とスマホでメッセージをやり取りしたのと同じだと思い、俺もきちんと体調を整えて明後日の退院を目指そう。

「退院したら色んな人にお礼を伝えないとな」
「そうだよ。明日は店があるから来れないけど、せっかくいいベットで寝れるし規則正しい生活になるから、休んでよ」
「ああ」
「またね」

三斗は果物の盛り合わせを掴んで病室を出て行き、男性の医師が入ってきた。

「まさか高坂君の知り合いがまた入院してくるとは思いませんでしたが、意識もしっかりありそうで安心しました」
「忙しい中で処置をしていただいて、ありがとうございます」
「いいえ。今は休んで静養して下さい」

医師が病室を出て行き、消灯時間まで少し時間があるからスマホを取って、メッセージ画面を表示させてキーボードを打つ。

『明日、“休刊”の事を話す』
『分かった。左手をお見舞いするから、覚悟しろ』

明日の亮二との話も色々とありそうだなと思い、ふぅっと息を吐く。

後は真琴だな…、もう少しで自宅待機が終わるし、一緒に帰ろうって約束をしているから、早くこの入院が終わらないかなと思い、就寝の体勢に入り目を瞑っても、浮かぶのは真琴の顔だった。
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