スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

入院して2日目になり、やっぱ味付けが薄くてThe病院食と思えるから、早く退院して真琴と一緒にご飯を作って食べたいな。

薄味の朝食と昼食を食べ終えて、することと言えば売店で買ったスポーツ新聞を幾つかを読み、情報を頭の中に叩き込む。

明日は退院でその足で高坂さんと一緒に井上監督へ謝罪しに行き、四つ葉に戻ったら秋山のケアと7月号の確認だ。

ドアがノックされて入ってきたのは亮二で、明らかに機嫌が悪いと分かるくらいブスッとしている。

「屋上に面を貸せ」
「分かった」

俺はスポーツ新聞を折りたたんで机の上に置いて、ベットから降りて2人で病室を出て、ナースステーションの看護師たちに亮二と屋上に行く事を伝え、エレベーターに乗り、屋上へと行った。

屋上に行くとベンチがいくつかあって、人も疎らで、俺達も空いているベンチに座る。

「“休刊”って聞いてないぞ」
「まだ確定では無くて、対象になるかもの段階だから話さなかったのは悪い」
「そんなに成績が悪いのかよ」
「他の雑誌は落ち幅がでかくはないし、俺のとこだけ希望部数に達してない月が多い。今回は3ヶ月の売り上げで見返したくて、6月号64
と7月号70で取った」
「先ずは6月号か…、勝算あんのかよ」
「田所が7月号に繋がるように書いてるし、その7月号を読んで6月号を欲しがる読者を想定して数を考えた」
「成る程ねぇ。ただな…」

亮二はそう言うと俺に顔を向け、左手で俺の病院着ごと胸倉を掴み、その表情は怒りに満ちている。

「こんな大事な事、言わずにされたのがムカついた」
「………ご免」

昨日、高坂さんにも『三輪っちも大事なメンバーだと思っているから』と言われ、俺って編集長になっても気づいていない事だらけで、まだまだだな。

「左手でお見舞いしたい所だが、昨日ひよっこの件でお見舞いしたばかりだし、お前の頭を叩いても俺の手が痛いだけで“休刊”の解決にもならんから辞める」

亮二は胸倉を掴んでいた左手を離す。

「一から十まで全部話せる訳では無いけど、これからも亮二が必要だし、もう少し伝え方を考える」
「分かった。後な、“休刊”になったら絶対ひよっこが悲しむし、俺はこれ以上あいつの泣き顔を見たくねぇんだけど」
「俺だって亮二に真琴の泣き顔を見られたくないけど」

俺の知らない所で真琴と2人きりになって泣いていたなんて、物凄く嫉妬したし、慰めるのは俺だけの役目なのにと、両手をギュッと握る。

「はっ、ここで下の名前呼びかよ。ようやく本音を出してきたな」
「隠していた訳じゃないし、亮二に奪われてたまるかよ」

いつも心に溜めていたのを出したくて、言葉を強めに言う。

「仕事上のライバルだけって思っていたが、まさか同じ1人の女に夢中になるとわな」
「言っておくけど真琴とはある程度の事はしているし、亮二が入る隙間は1ミリも無い」
「へぇ、そりゃ益々入りたくなるな」

亮二はニヤリとして、俺を見る。

「泣かせたら許さない」
「先に泣かせまくっているお前に言われたくねぇ」
「早く帰れ」
「へいへい。取り敢えず6月号の表紙の評判は教えろ。次のシンクロの撮影は落っこちんなよ」
「飛び込み台は暫く登らない」

俺がそう答えると、亮二はハハッと笑って立ち上がる。

「見送りはいい。他にいい写真が撮れたら、いつものように連絡する」
「分かった」

亮二は右手を上げるとドアの方に行き、屋上から出て行き、俺ははぁと息を吐く。

『まさか同じ1人の女に夢中になるとわな』

確かにそうだし、夢中で悪いかよと思いながら病室へ戻っていった。
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