スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

【もりや】でのランチを終え、俺は真琴の右手をそっと握ると、真琴は顔を赤らめる。

「四つ葉に着くまで“こう”したい」
「はい…」

照れる反応が可愛いなと思い、手をギュッと握る。

「初めてランチに誘われたので、嬉しいです」
「前は高坂さんが指定したホテルのランチだったけど、約束を実行したかった」

以前高坂さんが真琴を強制的に連れ出してホテルのランチを食べようとしていた所に俺が行き、計らいで俺と真琴で食べることになったけど、俺だって自分から誘ってランチをしたかったから誘った。

住宅街を歩いて、もうすぐ四つ葉のビルが見えそうな通りになると、ふと真琴の方に顔を見ると、昨日夜中に見た夢を思い出す。

あんなムカつく夢を見るのが初めてで、真琴は俺の元から離れないって自信はあるけれど、夢の中の2人の雰囲気が現実世界のようにリアルだったな。

俺は真琴の手をギュッと握り、通りから少し離れて壁に真琴の背中をつけると、空いてる自分の右手で真琴の顎をクイッと上げる。

「じ…仁さ…」

真琴のその先の言葉を封じるように自分の唇で塞ぎ、重ね続けると真琴が俺の白シャツをギュッと握り、更にキスの深さが増していく。

夢の中の亮二に、現実世界の亮二や芹澤達には真琴の事は渡さないと思いながらキスを続け、ぷはっと唇を離して真琴を見下ろすと、顔が苺のように真っ赤だ。

「ここ、外です…」
「亮二に渡したくないから、予防線」
「え?三輪さんですか?」
「夢の中でムカつく事をしてきたし、現実もしてきそうだし」
「私は仁さんしか見てないです」

真琴が目を潤ませながら俺を見上げる表情に、余計俺を煽ってくるのを気づいてない。

「もう一度、していい?」
「……」

真琴が真っ赤になりながら無言で頷き、顔を近付け、今度は熱を差し込んでキスをした。

キスをしていても夢の中が思い出され、こんなに不安になるのはなんでだ。

もうすぐ昼が終わるので名残り惜しく唇を離し、右手の親指で真琴の唇をなぞる。

「待ち合わせに間に合うよう、仕事を終わらせる」
「私は7時40分に会議室を出ますね。夕飯はスーパーで一緒に選びたいです」
「良いよ。その後は真琴にたっぷり触れるから」
「〜もう!先に戻ります!」

真琴が照れながら先に行くけど、あ…夢の中とダブりそうで顔を左右に振る。

四つ葉のビルに入り、3階に上がって会議室のドアを開けて秋山を手招いて、廊下で2人きりになった。

「この間は俺の不注意で不安にさせてご免」
「俺はカメラのレンズを拭いていたんで落下した瞬間は見てないですが、宝条さんはキツそうでした」
「そっか…」
「まだ荒木編集長から沢山の事を教わって無いですし、7月号は俺も気合い入れてるんで無茶はしないで下さい」
「そうだな。ノルマ3ヶ月の最後だし、気合い入れなきゃな」
「ええ」

2人でまた会議室に入り、俺は自分の席に座って皆から受け取った紙束を順に確認していく。

佐藤も原稿の精度も高いし、石毛も入社した時よりも段落を読みやすくするようになったし、野球班も球宴に関する内容が豊富だ。

次は真琴の宿題の原稿に目を通し、やっぱ漢字の使い方がまだだなと思いつつも、1週間分のニュースを真琴から見た内容で書いてあって面白い。

シンクロのインタビューを想定して書いた原稿に目を向けると、実家の和室で読んだ時よりも質問の内容が全く違うが、こっちの方が精度が上がっている。

質問もありきたりじゃなく、真琴自身が聞きたい言葉で書かれてあって、この短期間で成長がみれたな。

俺は赤ペンを走らせ、そして黒ボールペンで真琴宛に秘密のメッセージを書き、顔を上げる。

「皆の原稿を読み終えたから、順番に取りに来て。田所から」
「はい!」

皆が順番に並び、それぞれ色んな反応をしながら席に座っていき、真琴にも紙束を渡す。

本人も紙束を捲りながらがっくりしていたけど、俺が黒ボールペンで書いたページに差し掛かった時は体をビクッとさせていたので、俺はクスっと笑った。
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