スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
炒り玉子を作ろうと思ったのは、昨日自分の過失で炒り玉子を焦がしちゃって凹んでいたのに、荒木さんがそれをケチャップでフォローしてくれたからで、今日は昨日と逆で荒木さんの落ち込みを少しでも和らげることが出来たらと、そう思いついて作ったのだ。

「出来たては美味しいですね」
「ああ」
「荒木さんはケチャップが好きなんですか?」
「一美の『ケチャップなら何でもカバーが出来る』のを真似してるだけ」
「こう言うのを教えてくれるのって良いですね」
「一美が調子に乗るから言わないほうがいい」

一匙掬って食べて話し、一匙掬って食べて話してを繰り返しながら、ケチャップの味が口の中に広がっていき、もう少しで炒り玉子が無くなりそうだ。

「ケチャップがついてる」
「どこー…」

“に?”と言う前に荒木さんが右手で私の顎をクイッと上げ、親指で私の唇の左端の部分を拭い、そのままケチャップが着いた親指を自分でちゅぅと吸い舐め、スプーンを洗い、食器棚の引き出しにしまう姿をよそに、私はピシッと岩のように体と思考回路が硬直する。

「最後は食べていいから。先に寝る」

キッチンからリビングをつたって荒木さんがドアから出ていった瞬間、思考が戻って顔が一気に赤くなる。

えええっと、タオルをくしゃくしゃしていた腕を掴まれたでしょ?お腹がなって炒り玉子を作ったでしょ?その後一緒にケチャップがついた炒り玉子を食べたでしょ?でもって私の顔をクイッと上げて唇を拭い、最後はちゅぅっとするし!!

恋愛小説で表現されるのは『ついてるよ』と紙ナプキンで取ってくれたり、指でそっと取るくらいじゃん?その表現を荒木さんは超えてきたから、ドキドキが加速し、顔の熱さがなかなかひかないよ。

手でパタパタと顔を仰ぎながら最後の炒り玉子を一匙掬って食べ、本来のケチャップは酸味がある筈なのに、最後はほんの少し甘い味がした。
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