スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◆企画作り1
高坂専務から言われた『Scoperta』の休刊を阻止すべく、最初の対象となる5月号の内容決めが大詰めとなるんだけど、午後になっても田所副編集長と佐藤さんがページ数についてホワイトボード前で白熱している。

「こっちは譲る気はないぞ」
「前回こっちが譲った分があるけど、もう忘れたのかよ?」
「忘れてないけど、俺たちAのこの分は譲んない」
「じゃあ俺がお前の個人の企画の部分より多くページを書いても文句を言うなよ?」
「はぁ?」

このやり取りがお昼から続いていて、AとB班の先輩達はこの光景に慣れてるのか、2人のやり取りには気にせず原稿書きやノートパソコンで資料作りをしていて、荒木さんは相変わらず会議室には顔を出さないでいる。

会議室のドアがノックされ開かれると、総務課の星野さんが郵便物を抱えて入ってきたので、私は席から立って星野さんの側に行った。

「郵便物を届けていただいて、ありがとうございます」
「とんでもないです。今日はこの郵便物と、荒木編集長宛だけです」
「はい」

星野さんから四角くて大きい茶色い封筒と、ハガキ数枚を受け取り、星野さんは会議室から出ていった。

「重さ的に本ですかね?」
「もうすぐ発売の4月号かな?ちょっと荒木編集長に連絡してみるね」

私は席に戻り、封筒を眺めていると、中畑さんがそう言い、バックからスマホを取り出して電話をかけ始める。

「お疲れ様です、中畑です。4月が届きましたー…はい、今もホワイトボードの前でやり合ってます」
「…!…」

中畑さんの言葉に、田所副編集長と佐藤さんがピタッと会話をやめた。

「はい、そう伝えますー…、え?良いんですか?では先に皆で読みますね、はい、失礼します」

ピッっと音が聞こえ、中畑さんはスマホを机の上に置いて、ホワイトボードの前にいる2人に顔を向ける。

「『やり合うのなら2人の個人企画のページを全消しして、その分AとBのスペースにあてる』だそうです」
「やった!追加で私のページを増やしちゃおうかな」
「俺もそうしよう。田所副編集長達はもっと喧嘩して下さい!その分、俺たちがページを貰いますね」

中畑さんが荒木さんの伝言を2人に告げたら、AとB班の先輩達が盛り上がり、荒木さんの言葉の威力って凄いな。

「この伝言、姫川編集長の言い方よりもこたえるな」
「だな。今回はAから2ページは譲る」
「ありがとう。俺も自分の2ページ、田所のページにあてていい」
「いいの?これ、ずっとお前が取材している企画じゃん」
「全消しよりかはマシだし、ページは減っても読者に届けたい言葉は沢山書けるよ。宝条さん、申し訳ないけど、この後一緒に原稿の訂正に付き合ってもらえる?」
「分かりました」

“読者に届けたい言葉は沢山書ける”ー…か、佐藤さんのこの言葉、良いな。
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