スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「荒木編集長が4月号を読んでもいいって仰っていたので、開けますね」

中畑さんが丁寧に封筒の上を切り、中から取り出すと、表紙の写真はバレーボール選手がネットの高さよりも上でボールを打つ瞬間の写真が紙面の三分の二を締めており、凄くかっこいい写真だと分かる。

「4月号も大変だったなぁ」
「どんな事があったんですか?」
「確か、レイアウトのことで荒木編集長と一緒に青木印刷所に行ったんでしたっけ?」
「そうなんだよ。宝条さんが入社する前の3月にね、その時は4月号のレイアウトにとても悩んで焦って、荒木編集長に相談したら『妥協せず、最後まで向き合うのが大事』って言われてさ、2人でノートパソコンを持って青木印刷所に行って頭下げて、事務室の隅っこでレイアウトの訂正をしたんだ」

中畑さんがパラパラとページを捲りながら、私が入社する前の出来事を話す。

「荒木編集長は自分の取材や進行のチェックもあるのに一言も文句言わずに1ページづつレイアウトを見直ししてくれて、青木印刷所の人も荒木編集長の頼みだから大丈夫って試し刷りも何度も許してくれてさ、全部終わったのが深夜で、最後に荒木編集長と青木印刷所の人達と一緒に事務室で牛丼を食べたんだけど、俺だけ泣きながら食べた」

中畑さんは静かに雑誌を閉じて、ふぅっと息をつく。

「俺も休刊は絶対に嫌だから、この3か月、その先も完璧なレイアウトで原稿を仕上げてみせるよ」
「私も原稿の早打ちは自信あるし、読者アンケートで読者のいい声をもっとすくい上げますよ!」
「俺も写真の選定は自信あって、次も読者から声をもらうつもりだよ」

中畑さんを始め、製作班の先輩達が続々と向き合う姿勢をみて、この間荒木さんに言われたことを思い出し、私も置いていかれないようにしなきゃ。

「俺たち取材班も負けてられないな」
「そうだな。俺もそろそろ取材の時間だ。佐藤、終わったらいつもの場所で待ってるから」
「ああ、こっちも終わったら連絡する。B班の皆、このホワイトボードに貼ってある付箋の記事についてたけどー…」

田所副編集長はA班の人達と共に会議室を出ていき、佐藤さんはB班の人達と熱心に情報交換や記事の書き方について議論をし、私も製作の先輩と一緒に写真の選定の仕方を学び、夕方までそれが続いた。
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