スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side荒木仁

田所と一緒に部数会議に使われる会議室に入り、タウン情報部、ファッション部、スポーツ部の順に座り、対面に営業と経理の連中が座っていて、経理のおっさんは俺に視線を向けると、フンっとし、相変わらずな態度だと思い、小さく溜め息を吐き、上座には高坂さんが人事の部長と並んで座っていた。

「じゃあ、早速会議を始めようか。営業の補充からだけど、人事部長からお願い」
「はい。先月から高坂専務よりー…」

高坂さんが会議の進行を担い、営業の補充や書店周りについて話が進み、いよいよ俺達の部数の話になった。

「7月号の部数に関しての最終確認になるけど、3人共、先月の会議で申告した数で良いな」
「タウン情報部は変わらねぇ」
「俺もファッション部は部下達の特集に自信を持っているから、変わらないよ」
「スポーツ部も70の数は変わらない」

高坂さんの言葉に姫川と水瀬の2人は先月の部数会議で伝えた数で変わらず、俺もだ。

「はっ、そんな数字で確実に行けると思わん」

経理のおっさんが亮二みたいに鼻で笑うが、ムカつき度はおっさんが上だな。

「相変わらずムカつく言い方しか出来ねぇのかよ」

今度は姫川が言い出してきたので、会議室にまたかよって空気が出て、高坂さんも呆れた顔でいるし、くそつまらない時間が始まろうとする。

「お言葉ですが、前回のじゃんけんで決めた訳で、そちらに言われる筋合いは無いですけど」

水瀬もムスッとした表情で言い返すと、おっさんは俺の方に顔を向けてニヤっとするが、何を言い出すんだ?

「タウン情報部やファッション部は良いが、スポーツ部は“休刊”にならないように必死だからな」

おっさんの口から“休刊”のワードが出ると、会議室中がざわめき、姫川はブスッと、水瀬は相当驚いて俺を見つめるが、どうしてこのおっさんが“休刊”について知ってんだよ。

「昨日、高坂社長と飲んだ時に話が出た。出版社業界も不況にのまれ、存続をするには何処かが発行を停止しないと社員の給与も出せん」
「あのくそ親父…」
「大体スポーツ部のお前はー…」

おっさんの話に高坂さんの表情が険しくなるのが分かり、というか高坂社長は口が軽すぎるし、おっさんはずっとネチネチ言ってくるし。

「70という強気に出たが、結果が悪く“休刊”になったらお前はどう責任を取るんだ!」
「………」

責任か…、俺は前髪の隙間から田所の表情を見ると、田所は物凄く怒った表情でいて、これ以上は相手の思う壺になる。

「お言葉ですが、荒木編集長はー…」
「田所は黙って」

俺は田所の言葉を制して、小さく息を整える。

「田所を始め、佐藤や水野…、スポーツ部のメンバーは充分にやるべき事を全うしている。結果が悪ければ、全責任を俺が受ける」

そうはっきりと告げると、おっさんは嬉しそうにニヤけるのが癪に障る。

いつも遅くまで頑張ってくれているメンバーを見てきたから、俺の去就で皆を守れるならそうしたいと思った。

「言ったな。前からお前の態度が気に食わんし、結果が楽しー…」
「うっせぇよ!おっさんの相手をする前に、高坂!!」
「何〜?」
「今から荒木と兄弟喧嘩をするから、てめぇの専務室を貸せよ!!」
「良いけど程々にねぇ。とりあえず祐一に避難をするように連絡するよ」

高坂さんはスーツの内ポケットからスマホを取り出し、祐一さんにスポーツ部が使う会議室に避難するように電話で伝えた。

「荒木編集長…、どうして…」

俺の隣に座る田所は涙を流し、何度も服の袖で目を拭う。

「これが編集長としての責任だから」
「うっせぇよ!そんな事を聞くために俺は会議に出たんじゃね!とっとと行くぞ!水瀬もだ!!」
「うん…」

姫川は右手で俺の白シャツの胸元を掴みながら立たせ、水瀬は一度眼鏡を外して左手で目元を拭い、再び眼鏡をかけて立ち上がった。

「副編には悪いけど、2階のメンバーを頼むね」
「はい…」
「九条も2階に戻ってろ!」
「分かり…まし…た」

2人も田所と同じで涙目で席を立って会議室を出て行き、高坂さんは田所の側に来た。

「俺が田所の側にいるから、3人は行って」

俺達は先に会議室を出ていくと、祐一さんがスポーツ部が使う会議室に入る所が見え、俺は姫川達と共に専務室に入って行き、姫川が全力でドアを開けて俺を専務室の中に押し込む。

田所を残してきたけど高坂さんが側にいるから、俺は姫川の話に集中することに決めた。
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