スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
side高坂

仁達が会議室を出て行くと会議室はしぃんと静まり、参加者達は目が揺れていて、俺は田所の肩にポンっと左手を置き、経理課のおっさんをギリっと睨む。

「おっさんさぁ、こんな空気にしてくれちゃって、なんてことをしてくれんだよ」
「70なんて馬鹿げた数字に素直にこっちがー…」
「うるせぇよ!」

俺も姫川のように声を荒げ、田所の肩に置いた手を離して、おっさんの側に行き、本人のネクタイをシャツごと掴む。

「荒木は馬鹿げた数字を言わないし、確証があって言っている。それは長年俺が編集長の頃から見てきていたし、それ以上3雑誌や荒木達の事を言ってみろ、俺が許さない」

俺が冷めた目でおっさんを見下ろし、取り巻き野郎達は青ざめているのを見て、ちぇっ、つまんね〜。おっさんのネクタイとシャツを掴んでいた手をバッと離して、自分のスーツを直す。

「皆も怖がらせてご免ねぇ〜。この会議のやり取りは他言無用だよ。喋ったらどうなるか、よ〜く想像してね。田所、行くぞ」
「は…い…」

俺はそれじゃあと手を振って田所と会議室を出て行き、スポーツ部が使う会議室に行った。

そして姫川達が俺が使う専務室のドアをぶっ壊してしまい、余り反省していないので自宅謹慎を告げると、懲りずにグチグチ言うし、何だよこいつらはと呆れる。

仁がスポーツ部のメンバーに自分の思いを告げるのを見て、“社会科見学”の時のように自分の思いを伝えられるようになったのは良いことで、メンバー達の顔もやる気に満ちていて、絶対に“休刊”の対象を覆したいし、あのおっさんを見返したい。

仁が廊下に来てドアを閉じると、俺に顔を向ける。

「会議の途中で抜け出してご免」
「いーって。おっさん達は青ざめていたし、会議室にいた連中もこの事は誰にも漏らさないだろ」
「だと良いけど」

仁がふぅって息を吐くと、姫川が仁の首に腕を回す。

「お前のせいで謹慎になったんだ、今日の夜から朝まで付き合えよ」
「姫川って悪酔いするから嫌なんだけど」
「高坂よりかマシだな。水瀬も付き合えよ。前にゆっくり朝を起きてぇって言っただろ」
「言ったけどさ…、恋人に相談させてよ」
「良いなぁ〜、俺も混ぜてよ」

3人だけでお泊まり保育をしようとしているのが羨ましくて、混ぜて貰いたいな。

「稔はこの後、ドアの修理を呼んだり、仕事だって溜まっているんだから遊ばない」
「え〜、高坂、悲しい」

祐一に論され、せっかくのお泊まり保育が…、残念で悲しがると、3人は俺を呆れて見てるし。

「8月には絶対四兄弟でお泊まり保育をするからな!」
「いーから、修理を呼ぶぞ」

俺は祐一に腕を取られてズルズルと専務室に向かい、壊れたドアを祐一と一緒に専務室の中に入れて壁に立てかけ、自分の椅子にドカっと座ると、祐一は俺の正面に立つ。

「派手に壊してくれて、参ったね」
「でも会議室で殴り合ったら仁君の立場も危ういから、姫川君の判断は良かったと思うよ」
「そりゃそうだけど、何もドアを壊すことはないだろ」

俺は壊れたドアを見つめ、苦笑する。

あんなに壊れる位に蹴って、姫川も仁も容赦ないなと思いながら、修理を行う業者に連絡した。

修理は明日じゃないと来ないと言うし、マジで憂鬱だし、おっさんにはきっちりと金額を上乗せして、親父にも“休刊”の事を漏らした事を問い詰めないと。

「あの…、すいません」

専務室の扉がない状態だから、専務室に来た人物が誰だか直ぐに分かるけど、やって来たのは部数会議に参加した営業達と経理の若い連中で、おっさんと取り巻き野郎達はいない。

「こんなに大勢でどうしたの?」
「俺、あの経理部長の言い方に納得してなくて、荒木編集長にスポーツ部を続けて欲しいです」
「書店周りも力を入れて、“Scoperta”を多く置かせて貰うように頑張ります!」
「私達経理も予算を70で取れるように、何度でも部長とやり合います!」

次々と皆が提案をしてくれて、何だよ、高坂、嬉し泣きをしちゃうじゃん。

「ありがとう。すっげぇ嬉しいし、俺も親父に“Scoperta”を“休刊”させんなよって言うよ」
「お願いします!」
「高坂専務が会議室で経理部長にビシッと言う姿がとても格好よかったです!」
「マジで?もっと褒めてよ」

営業や経理の子達から嬉しい言葉を貰え、親父にガツンと言える勇気を貰え、祐一はそんな俺達を優しく見守ってくれた。

3人がここで兄弟喧嘩をしたのは痛かったけど、四つ葉の社員にも雑誌を大切にしようとするのは大勢いることが分かったから、少しだけ修理代金は少なくするけど、マジで壊すのはもう止めて欲しいと願うし、どんなやり取りしたかも後で聞こうと決めたのだった。
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