スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
先輩達と7月号に取り組み始め、会議室の時刻は午後7時50分になる。

「今日はここ迄にしよう。俺と佐藤で荒木編集長に進捗を報告するから。お疲れ様」
「はい!お疲れ様です」

田所副編集長の言葉に皆で返事をして、私も同窓会に行くために荷物を纏め始める。

「すいません、この後予定があってお先に失礼します」

私は先輩達に挨拶をして会議室を出て1階に降りてロビーを歩くと、高坂専務と橘さんがソファに座っていて私に気づく。

「お疲れ様です」
「いつも遅くまで頑張っているね。良かったら駅まで付き添うよ?」
「ありがとうございます!」
「って事で、祐一は先に帰っていいよ」
「帰るけど、明日は朝から取り引きに行くから直接家に行くからな」
「分かっているし、ほらほら、可愛い部下との帰宅時間を邪魔しないでね」
「はいはい。宝条さんもお疲れ様、気をつけてね」
「お疲れ様でした」

橘さんが先に四つ葉を出て、私は高坂専務と一緒に藍山駅まで一緒に行くことになった。

「駅までありがとうございます」
「いーって。社員を大事にする格好いい専務でしょ?」
「そうですね」

自信たっぷりに言う高坂専務に、私は笑ってしまう。

「この後はそのまま帰宅?」
「この後、大学の同窓会があって、歓迎会で使った居酒屋に行くんです」
「へぇ、同窓会かぁ。芹澤っていうメンズも来るの?」
「はい、主催の葵が皆に声をかけたんです」

私がバカ正直に答えると、高坂専務は心配な表情をする。

「うーん、時間も遅いし、さくっと行って直ぐ帰るんだよ」
「明日も7月号を進めたいので、程々にします」
「うん、そうしな。もし困ったら俺のスマホに連絡していいから、名刺を渡しておくよ。帰りは電車があるうちだからね」
「何だか水瀬編集長やお父さんみたいです」
「そう?水瀬なら分かるけど、お父さんは心外だな。高坂、泣いちゃう」

高坂専務が顔を覆ってシクシク泣く姿に、また私は笑っちゃう。

藍山駅について高坂専務から名刺を貰い、お財布にしまって、私は改札を通り、高坂専務はタクシーに乗って別れ、一路S駅まで電車で移動して居酒屋に向かった。

入口の店員に大学名と葵の名前を言うと部屋の場所を教えてもらい、タイミングをみて芹澤に付き合っている人がいるってきちんと話して、友達関係を考えなきゃ。

手にしたバックの紐をギュッと握り、ドアを開けると、顔馴染みの同級生達が多くて、卒業後は全然連絡を取っていなかったなぁ。

「真琴〜、久しぶり〜」
「葵〜」

葵が駆け寄ってきたので、2人で両腕を広げてギュッと抱きしめあった。

「真琴で最後だから、ほらこっち」
「あ…」
「よう」

抱きしめあった腕が解かれ、葵が私を席に連れて行ったんだけど、そこに芹澤がいて、短めな挨拶をされた。

「久しぶり」
「メッセージでやり取りしているけど、会うのは久しぶりだよな。こっちの席が空いてるから、座れば?」
「う、うん」

芹澤の隣の席が空席だったので座ると、すかさず芹澤が私にメニュー表を渡してきた。

「ほら」
「ありがとう」

メニュー表を受け取って、うーん、この後芹澤と話しをしたいからあまりお酒の強い物は避けようと、度数が低めのものと夕飯用に食事を一品頼んで、店員が注文をした物を運んでくれて、改めて皆で乾杯をした。

「ねぇ聞いてよ〜、辞めた話なんだけどー…」

私の対面に座る葵が退職した経緯を話し始め、憧れの恋愛漫画を出版する会社に入社したのは良いけど、出版業界の不況から発行部数が減って給与の変更もあり、尚且つ不規則な時間が続き、労働時間が想像以上に長い事に理想と現実に直面したようで、散々悩んだけど退職し、今は自分で描けるようになりたいと決めて、来月からフリーター兼漫画家の専門学校に通う事にしたとのこと。

「親は絶句していたけど、お姉ちゃんだけは味方してくれて『私がファン第一号になるわ!』って。凄く嬉しかった」

葵は退職した事には後を引きずっていなくて目がキラキラしていて、葵の行動力も凄いけど、前向きな所は大学の頃から変わってないな。

「私も葵の事を応援する!」
「ありがと〜。売れたらサインを書くからね」

葵が茶目っ気たっぷりに言い、暫くは皆で卒業後の進路の話で盛り上がった。
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