スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
久しぶりにお酒を飲んだのもあって、顔がかぁっと熱が帯びていくのが分かり、一旦お手洗いに行って気分をリセットしたいな。

「ご免、お手洗いに行く」

葵達に断りを入れて個室を出てお手洗いに行き、少しメイクを直したり、赤く火照っている顔を両手で仰いで冷ますようにする。

久しぶりにお酒を飲むと駄目だなぁ…、この後、芹澤と話をしたいし、何度もパタパタと仰ぎながらお手洗いを出ると個室のドアの前に芹澤がいてドキッとする。

「平気か?」
「うん…、大丈夫」
「なら良いけど」

芹澤が個室のドアを開けようとしたけど、私は待ったをかけるように芹澤のスーツの裾を右手でギュッと握る。

「あ、あのね、話したい事があって、良い?」
「良いよ」

芹澤はドアを開けずにいて、どうしよう、いざ話そうとするけど、どんな順番で言えば良いかぐるぐると考えが巡る。

「えっと…」
「うん」

芹澤は急かさず私が言うのを待ってくれていて、私達の側を店員さんが忙しそうに料理や飲み物を運んでいる。

「ここだと落ち着かないから、受付の所に行くか?」
「そうする」

芹澤の提案に乗り、受付の所にあるソファに座り、私は深呼吸をして芹澤に向き合う。

「あのね、芹澤に伝えたいことがあって」
「うん」

私と仁さんの事を伝えなきゃと、すぅっと息を吸い、表情もキッとして芹澤を見る。

「私ね、今…付き合っている人がいるんだ」

はっきりと告げると、芹澤は目を見開いている。

「その人とね色々話し合って、芹澤とのメッセージは頻繁には出来ないけれど、テレビ放送を見た時の感想は送るね」

自分勝手な言い方だけれど、仁さんと話し合って芹澤との距離感をきちんとしたいし、内心はとてもドキドキして、芹澤とは友達としての距離感でいたし、これ以上の進展もないはー…。

「告白する前に振られたな」
「え…」

私の反応に芹澤が苦笑する。

「今から言うのは反則になるけど、俺さ、大学2年から宝条のこと、好きなんだ」

芹澤の告白に、居酒屋のBGMが聞こえないくらい衝撃を受ける。

「嘘…」
「嘘じゃない。ずっと好きで、いつ伝えるか、卒業式で言いたかったけどタイミングを逃して後悔しててさ」

芹澤はそこから仕事を頑張って自分に自信をつけて、そして四つ葉のファッション部の雑誌の対談日を機に私に告白しようとしたけど私が仕事を理由に断ってしまい、その後は葵の同窓会の声かけで最後のチャンスだと思って参加を決めたのこと。

「まさか告白する前に、先に宝条に彼氏が出来るとは思わなかった」
「ご免…」

芹澤が私の事を友達以上に思っていたとは全然気付かなくて、前に仁さんが私に『他人からの好意に気づいていない』って言葉を言ったけれど、三輪さんも芹澤から想われていた事がこんなにも胸が切なくて苦しくて、でも私の心の中には仁さんただ一人しかいなくて。

「本当にご免…」

じわっと視界が滲んで、鼻を啜ればそれがスイッチになったのか、ボロボロと涙が溢れて両手で顔を覆い隠す。

「泣くなよって言いたいけど、無理だよな」
「………」

芹澤の言葉に黙って何度も頷く。

「酔って気分悪くなったから帰るって皆に言ってくる。荷物を持ってくるから、待ってて」
「あ…がとう」

芹澤の足音が遠くにいった音が聞こえ、私は声を我慢しながら泣き続けた。

「お待たせ」

覆っていた両手を離すと芹澤が私のバックを差し出して、私は受け取ってソファから立つ。

「球宴の放送、頑張るからそれは見てよ」
「うん」
「かっこよさを磨くから、俺を振ったことを後悔させる」
「何それ」

この話し方は大学の頃から変わっていなくて、お互いふふっと笑い、芹澤の気遣いが嬉しい。

「じゃあ、行くね」
「ああ」

手を振って居酒屋を出ると、また涙が出そうで見上げて夜空を眺める。

見上げた夜空は全然星が見えなくて、ただただ暗くて…、車のクラクションが鳴って顔をそこに向けると、車のライトが消えて、運転席のドアが開き、降りてきたのは黒ぶち眼鏡姿の仁さんだった。
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