スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
意識が戻ると天井は見覚えのあるリビングの天井で、体には掛け布団がかけられていて、キッチンから良い香りが…、顔をそっちに向けると白シャツの仁さんが見えたので、私は目を擦りながらムクッと体を起こした。

両腕を上にう〜んと伸ばしてふぅっと息を吐いたら、仁さんが振り向く。

「はよう」
「え?おはようって、まさか?!」

ローテーブルの上にあるリモコンを手に取って電源をつければ、爽やかな男性アナウンサーが朝の時刻を知らせる映像が映り、あぁぁ、あのまま寝てしまってたんだとがっくりする。

ノート書きの時間迄には起きようと思ったのに、がっつりと寝ちゃった…、掛け布団を纏めてそこに顔をボスっと埋めた。

仁さんと一緒にノート書きをしたかったのにな〜と、両足をバタバタさせると頭の上に大きな手がポンっと置かれたので、そっと掛け布団から顔を上げると仁さんがしゃがんでいて、私は体を起こす。

「いつの間にか寝ちゃって…、ノート書きを一緒にしたかったです」

掛け布団をギュッと抱きしめていると、頭の上に置かれている大きな手が私の髪の毛をくしゃっとする。

「眠い目をしたままノートは書けない」
「う〜」

仁さんの言葉にまた掛け布団をギュッとすると、大きな手が離れ唇が重なり、私は目を何度も瞬きをする。

ぷはっと唇が離れ、仁さんは立ち上がってキッチンに向かい、コンロの前に立ってバチっと火を消す音が聞こえた。

さっき迄は残念な気持ちだったのに、キスをされただけで吹っ飛ぶのは単純かなと思いつつ、私は掛け布団を畳んで仁さんの元に行き、コンロの所を見ると小さなお鍋に美味しそうなお味噌汁がふつふつと湧いている。

「卵焼きを作ります」
「お願い」

2人で朝食の準備をして、ローテーブルの其々の定位置でご飯を食べ、私は仁さんが作ってくれたお味噌汁をゆっくり飲む。

「美味しいです」
「ありがと」
「今日も最後まで残って原稿ですか?」
「ああ。今日で個人の企画を書き上げて、後は皆の原稿を校正する」
「私は佐藤さんの原稿の清書です」

仁さんが卵焼きをバクッと食べ、2人で今日のスケジュールを確認し、ご飯を食べ終えて私は出かける準備を始めた。

玄関先に行き、仁さんの方へ振り向く。

「3つ目の宿題…、四つ葉の会議室で見直ししたら提出するので読んで下さい」
「分かった。どんな内容で書いたのか、楽しみにしてる」
「はい!」

私は先にシェアハウスを出て最寄り駅から電車に乗り、満員電車に揺られながら藍山駅に向かい、改札を出ると九条さんの姿が見えたので駆け寄る。

「おはようございます!」
「おはようございます。7月号は順調ですか?」

私達は歩きながら7月号について話し出す。

「少しづつ進めていまして、昨日は掲載順を決める為に田所副編集長と佐藤さんが“じゃんけん対決”をしましたけど、姫川編集長に怒られちゃいました」
「あの盛り上がりは“じゃんけん対決”だったんですね」

九条さんが言うには、姫川編集長と九条さんと高坂専務でタウン情報部の今後の事を話していたら、私達の“じゃんけん対決”の盛り上がりが使っている会議室迄聞こえていたようで、姫川編集長は物凄くブスッとしていたみたい。

「部数会議の“じゃんけん対決”は今でも鮮明に覚えていますし、高坂専務のノリノリな進行も笑えました」
「まさか“じゃんけん対決”をして部数を決めるなんて思いもしなかったです」

2人で笑いながら四つ葉に入ると、ロビーでは社員の人達が壁の一部に貼られている紙の前で集まっていて、何だろう?私と九条さんもその紙の前に行き、書かれている文章に目を見開いた。

その紙の1行目には『以下の社員の処遇について』とあり、続けてこう書いてある。

“経理課部長、並びに経理課の2人は一定の期間減給処分を課す。”
“次に経理課部長は日々のパワハラ関連の発言や勤務態度についての報告が複数あり、人事部との面談の上で今後の進退について協議する。”
“各3雑誌の編集長は専務室のドアの器物損壊の責任を取るため、一定期間の減給処分を課す。”

とあり、その次の行には手書きでこう書かれていた。

“兄弟喧嘩と俺の専務室のドアの損壊のきっかけを作った経理課部長には更なる修理代金の金額を請求をするので、覚悟してねー。高坂稔”

とあり、高坂専務…わざわざ手書きで書くなんて経理課の部長達に相当怒っているし、仁さんも減給処分なんだ。

「これは暫く姫川編集長の機嫌が悪くなる想像が出来ます」
「ですね」

九条さんは諦めた感じで笑っていて、私も想像が出来てしまう。

階段を上がって2階で九条さんと別れ、3階についていつものように会議室に入り、7月号に向けての仕事に取り組んだ。
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