スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
編集部のドアを開けて中に入ると、ファッション部のエリアは水瀬編集長と数名の社員がいて、タウン情報部は姫川編集長だけ、そして私達のスポーツ部は仁さんだけが編集長の席に座っていた。

私はゴクッと唾を飲んでノートパソコンを抱きしめる腕の力を強め、つかつかと仁さんの側に立つ。

「宿題を印刷しても良いですか?」
「良いよ」
「ありがとうございます」

私は仁さんの席の近くにあるコンセントにノートパソコンのケーブルを繋いで、印刷の指示を出して、1枚1枚出てくるのを見守って、順番通りになっているかを確認してクリップで留めて、仁さんに差し出す。

「3つ目の宿題、読んで下さい」
「分かった」

仁さんは受け取ると赤ペンを手に取り、私は近くの席で座って添削を待つけど、キュッ、キュキュッと容赦なく赤ペンが走る音が聞こえ、う〜、この時間がとても緊張する。

姫川編集長はずっとキーボードを高速で打ち続け、水瀬編集長はファッション部の人と雑誌の進行について話し合いを続け、スポーツ部では私と仁さんだけが無言のまま時間が過ぎていって、やがて仁さんは赤ペンを置いて、鉛筆に持ち替えて何かを書き、鉛筆を置くと宿題の用紙を整えて席を立ったので私も立った。

そして用紙を私に差し出す。

「読んだ」
「ありがとうございます」

私は差し出された用紙を受け取り、ノートパソコンを抱える。

「宿題を読んでいただいて、ありがとうございます」
「会議室に戻って、田所達に残業は8時迄って伝えて」
「はい!お先に失礼します!」

私は仁さんに頭を下げて編集部を出て行き、廊下を歩いて階段がある所まで進むとピタッと止まって、恐る恐る宿題の用紙に視線を向け、1枚目からガッツリと赤ペンが走っていて、容赦ない……。

2枚、3枚、5枚目迄もびっしりと赤くて、佐藤さんに慰めて貰おう…、田所副編集長は泣きそうになっていたけどめげずに書いて今の地位までいっているんだから、たった3回の提出でめげてはだめだよね。

そして最後の6枚目の空白のスペースには赤ペンで、こう書かれていた。

“この宿題を元に、1つの企画を作るのが新しい宿題”
“内容的に高坂さんと伊東と水野に話を振ると良い”
“掲載に辿り着けるかは自分次第”

私次第で“Scoperta”に記事が載れる迄に時間がどれくらいかかる?ううん、のんびりしていたら駄目じゃん!水野先輩だって3日でやり遂げたんだから、私も喰らいついて、追い越すまでにしなきゃ!

「あ…」

そして赤ペンの最後の文章の下に鉛筆で小さく書かれている文字は、“こう”書かれていた。

“真琴へ”
“3つ目の宿題、お疲れ。一緒に帰ろう”

抜き打ちチェックの時も真っ赤な用紙で返されて、そこで追加で宿題を出されたけど、その時も仁さんが“一緒に帰ろう”って伝言を書いてあったっけ。

シンプルな伝言だけど仁さんらしいし、久しぶりに一緒に帰れるのが嬉しくて、この廊下に私だけで良かった…、絶対ニヤけてるもん。

宿題の用紙をギュッと抱きしめ、後で仁さんに待ち合わせの場所の相談をメッセージでして、それまでは3階の会議室に戻って、早速高坂専務達に話を振って企画を書き出そう!

私は階段を駆け上がって、会議室に戻った。
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