スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
藍山駅の次の駅で降りて、改札を出てロータリー付近で仁さんを待つ。

編集部にいた時は周りに社員達がいたから、シェアハウスに帰ったら仁さんに宿題の感想を改めて聞きたいな。

「お待たせ」

背後から声をかけられ振り向くと仁さんがいて、あれ?雰囲気がいつもと違うような気がする。

「何かありました?」
「………明日、皆の前で話したいことがある」

前髪で仁さんの表情は読みにくいけど、声からしてマイナスの様な内容じゃないことは伝わった。

「分かりました。今日は仁さんと一緒にシェアハウスでホットミルクを飲みたいです」
「ああ、そうしよう」

仁さんがロータリーに停車しているタクシーに手を挙げ、タクシーの扉が開き、私が奥の席に座り、その後に仁さんが続けて隣に座って住所を告げると、タクシーがシェアハウスに向けて走り出す。

「宿題、読んでいただいてありがとうございました。すっごく時間がかかって、もっと自分の時間を上手く使わなくちゃって思いました」
「真琴のペースは真琴でしか出来ないから、無理は絶対駄目」
「はい」

仁さんに顔を向けて微笑むと仁さんも口元がフッと笑っていて、どちらかが言うこともなく自然に手を握り合い、シェアハウスに着くまで握り合った手が解くことは無かった。

シェアハウスについて玄関に入り、仁さんはふぅっと息を吐く。

「着替え終わったらリビングでホットミルクを飲もう」
「分かりました。私も一旦、着替えてきます」

一緒に2階に行き、其々の部屋に入って、私は自分の机の上にバックを置いてそこから宿題の紙束とペンケースとノートを持って部屋を出て1階に行き、リビングに入ってそれらをローテーブルに置き、キッチンに移動してホットミルクの準備を始める。

お鍋に牛乳を注いで火を点けて沸々と温まるのを見ていたらグレーのスウェットを着た仁さんが隣に来た。

「真琴とホットミルクを飲むのが定番になったな」
「そうですね。これが無いと落ち着かないです」

いい感じに温まったホットミルクをマグカップに注いで、リビングに向かい、定位置で飲む。

両手でマグカップを持って少しづつ飲み、カップから唇を離すと仁さんが大きな右手を伸ばしてくるから、もしかしてまた唇を拭おうとしている?!

私はマグカップをローテーブルに置いて、自分の右手側のルームウェアの袖口で拭こうとすると、その手を掴まれた。

「は、離して下さい!」
「嫌だ」
「絶対に親指で拭おうとしていますよね?!」
「……じゃあ、“こう”する」

グイッと引き寄せられ、仁さんの顔が間近になって、そのまま仁さんの唇が私の唇の左端に触れ、チュッと音がして顔が離れた。

「取れた」
「反則です…」

普段は指で拭うのに唇でしてくるから、顔が一気に赤くなったのが分かって両手で何度も扇いでいると、仁さんは静かにホットミルクを飲み始める。

私は3つ目の宿題の紙束に手を伸ばして、1枚目から赤ペンで指摘された箇所を黙読し、ペンケースからシャーペンを取り出してノートに企画のアイディアを練り出した。

女性の読者を増やすには難しい言葉ばかりだと堅く感じるし、20〜30代とかに絞ってみるとか?

“Scoperta”に取り上げているスポーツは多岐にわたっているし、先ずは“社会科見学”で初めて野球施設に行った時に感じた事を取り入れようと、スマホのデータに保存をしている写真を見返そうっと。

ノートに企画の全体のテーマと、これを書くために調べる事や取材する事を書いてみて、うーん、調べる事が多いかな?でも少ないと伝わりきれないし、企画を作るのって難しい…。

ちらっと仁さん見ると本人は原稿用紙に黙々と鉛筆を走らせ、1枚2枚と段々と増えていって、時折ノートを見返しながら原稿用紙に書いていくのを見て、沢山書けて凄いなぁっとじぃっと見ていると、仁さんが鉛筆を動かす手を止めて顔を上げてた。

「どうした?」
「す、すいません。いっぱい言葉が出てくるのが凄いなぁって」
「……ありがと」
「企画というか、自分で考えたことをいざ進めようとすると上手く纏まらないんです」
「最初から上手い人はいない」
「仁さんの様にいっぱい言葉を書けるようになりたいです」
「こればかりは経験だから、いっぱい書くしかない」
「……はい」

またシャーペンを持ってノートに向かい合って書き進めていると、頭の上に手がポンって置かれ、顔を上げたら仁さんの口元が少し笑っている。

「真琴の書いた企画、載れる様に応援するからいっぱい書いて」
「……はい!」

さっきは力なく返事をしたけれど、今は仁さんの励ましが嬉しくて、私って単純かも。

「3行目の“速い”と“早い”の使い方が違うから気をつけて」
「うっ…すいません…」

私は消しゴムで消して書き直しをして、また書き始め、仁さんはクスっと笑って鉛筆を原稿用紙に走らせ、この日は仁さんに漢字の使い方を寝るまでに教えてもらった。
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