スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「この状態は稔には内緒にしておくね」
「はい…、お願いします」

秘書の橘さんがバックミラー越しに微笑んでいて、私は小声で答えるけど、顔の火照りを直す事が出来ない…、だって仁さんが私の膝に頭を預けたからで、いわゆる“膝枕”状態なのだ。

どどど、どうしよ…、最初は自分の肩に重みを感じたけど、車が発進したと同時にドサッと仁さんの頭が私の両膝に乗って、余りにも突然な事に身体が石のようにピシッっと固まる。

恋愛小説やドラマでも膝枕のシチュエーションはあるけれど、現実世界にも起こるとは思わないし、まさか車の中でとは。早く南◯駅に着いてほしい、いや、でも…と思考回路が顔の火照りで爆発しそうになるよ。

視線を仁さんの髪の毛に向けると、サラっとした髪の毛だよなぁ…、なんとかして動く右手でそっと仁さんの髪の毛に触れ、触り心地が良い。

この1週間で朝から晩までずっと原稿に取り組んでいたし、他の仕事もあるから疲れもきっとあったんだと思う。

「ゆっくり休んで下さいね」

小さな声で言い、私はずっと外の景色を見続けた。

「もうすぐ南◯駅に着くよ」
「遅い時間なのに、送っていただいてありがとうございます」
「どーいたしまして。時々稔から宝条さんが一生懸命に仕事をしている事を聞いていたし、夜道は1人で帰るのは危ないからさ」
「はい、帰る時は気をつけます」
「うん。お、駅が見えてきた」

車が南◯駅のロータリーに着き、私は仁さんの肩を優しく叩くと、仁さんがムクッと体を起こす。

「送ってくれてありがと」
「余程疲れがあったんだね」
「疲れた」

仁さんはバックを手にして後部座席のドアを開けて降りたので、私も続いて降りて一緒に運転席の方へ行くと、窓が下がる。

「僕も“Scoperta”を読むのが楽しみだから、7月号も楽しみにしてるね」

橘さんはニコッと微笑み、窓が上がって車が走り去るのを2人で見送ると、私の右手が仁さんの大きな左手に包まれたので顔を仁さんに向けたら、仁さんも私の方に顔を向けていた。

「シェアハウスに一緒に住んでいることはまだ秘密だから、ここからはまた“一緒に帰ろう”?」
「はい!」

お互いギュッと握り、南◯駅の改札に入って電車に乗り、シェアハウスの最寄り駅に着いて一緒にシェアハウスに向けて歩き出す。

「仁さんが書いた原稿、本当に小説を読んでいるかのようでした」

会議室で書き上げた原稿を黙読をさせてもらったけど、こんなに素晴らしい文章を書ける仁さんが凄くて、小学生並みの感想しか言えない自分が恥ずかしいけど、この原稿の清書を任された時は嬉しかったし、印刷が出来て、仁さんの言葉が読者に届くんだと嬉しくて泣いちゃった。

「いつか真琴の記事が初めて“Scoperta”に載る時は、俺はどんな風になるんだろうな」
「うーん、厳しい言葉じゃ嫌ですよ」
「厳しくしないと他のメンバーが不公平」
「そりゃそうですけど…」

頑張った分は褒めて欲しいな。

「ご褒美を考えておく」
「どんなですか?」
「秘密。言ったら楽しみがない」
「えー」

仁さんからのご褒美は嬉しいけど、秘密って何だろう。

「明日は青木印刷所にバイク便を出したり、次の8月号の話し合いが始まるから、帰ってご飯を食べて一緒に寝るよ」
「は~い」

久しぶりに一緒に過ごせることにワクワクしながら、仁さんの手をギュッと握り、シェアハウスに帰っていった。
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