スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「青木印刷所への提出、お疲れー」
「久しぶりの飲みを楽しもう」

田所副編集長と佐藤さんの音頭でグラスがぶつかり合い、先輩達はグビグビと飲んでいて、私も注文したサワーを飲む。

四つ葉出版社の飲み会で使う居酒屋の個室に私達スポーツ部だけの飲みが始まり、石毛先輩はとても大きなジョッキを片手に高橋先輩と話していて、私も大学の同窓会ではあまり飲めなかったので度数が高くない飲み物と、自分じゃ作らない一品料理を口に含む。

普段シェアハウスにいる時は決まった料理しか作らないから、こういう場所では自分以外の人が作った料理を堪能した。

「こういう場所で自分以外の作った料理を食べるのが幸せです」
「分かる!この味付けが最高!」

隣に座る篠田先輩と私は料理を食べながら過ごしていて、店員さんが忙しそうにお酒をどんどん運んでくるけど、先輩達の飲むペースが凄い。

水野先輩は顔は赤く無くて普段と変わらなく、秋山先輩はジョッキの中身が無くなるスピードが早い。

「先輩達の飲むスピードが…」
「私は慣れているけど、取材班は現場では我慢しているからね」

“社会科見学”の時に田所副編集長達は、お客さん達が客席でアルコールを楽しんでいるのを見ていると自分達は飲めないから、飲む時は凄く飲むって言ってたな。

個室のドアが開いて店員さんかなと思ったら、高坂専務が入って来て、皆でピタッと固まる。

え?何で高坂専務がここに?当の本人はすっごくニコニコした顔が怖い。

「やっほ~、飲むなら誘ってよ。高坂、寂しい」

高坂専務は両手で顔を覆って泣き真似をするんだけど、直ぐ手を離して篠田先輩の隣に座ると、スーツの内ポケットに手を入れて、そこから白い封筒を取り出した。

「荒木から飲み代をすこーし貰ったから、もっと飲もうよ」
「やった!ありがとうございます!」
「本人がいないのが寂しいですが、遠慮なく飲みますね!」

田所副編集長と佐藤さんは高坂専務から白い封筒を受け取り、早速メニュー表を取り出して料理や飲み物を追加で注文した。

私は一品料理のいくつかを小皿に取り分けて、高坂専務に差し出す。

「どうぞ!」
「ありがと!可愛い部下と格好いいメンズ達に囲まれて食べれるのはラッキ~」

高坂専務は小皿に受け取ると、上機嫌で食事や飲み物を堪能し始め、私も追加で運ばれた食事にご機嫌になり、飲み会に参加してよかったぁ。

「高坂専務、聞いてくださいよ!佐藤が彼女と同棲を考えているらしくて、良いアドバイスってあります?」

田所副編集長の話しをきっかけに、恋バナが始まろうとする。

「不規則な時間ですれ違っているし、『おはよう』とか『おかえり』って目の前で言いたいんだ」

そこから佐藤さんは出会いや交際のきっかけを話してくれて、佐藤さんの隣に座る高橋先輩は涙目になっている。

「いつも取材や俺達のフォローに忙しいのに、それを言い訳にしないし、彼女さんの話しをする時の佐藤さんの表情がすっごく良いんですよ。良いなぁ…、一緒に住むって…、うわぁ、俺、今、凄く嬉しいです」

高橋先輩が嬉しそうにしていて、私も仁さんと一緒にシェアハウスで過ごす内に『おはよう』とか『行ってきます』の挨拶を交わすのは嬉しいもんな。

「一緒に住むとさ、相手の良し悪しを見逃すのかそうじゃないかが出てくるけど、俺も荒木も、このスポーツ部全員が佐藤なら上手くいけるって断言が出来るよ」

高坂専務がうんと優しい表情で佐藤さんを見つめ、この個室のいる全員が頷いた。

「物件探しなら荒木に相談するといいよ。良い不動産屋を紹介してくれるし、俺もいっぱいイチャつきが出来る物件を探そうかなぁ」

高坂専務はお酒が入ったグラスを片手に、羨ましそうにする。

「それって高坂専務はお付き合いしている人がいるんですか?」
「残念な事にお付き合いしている人はいないよ〜」

中畑さんの質問に高坂専務は否定するけど、あれ?前に一緒につかの間のドライブではー…

「“凄く大切な人”にアプローチ中だから、お付き合いしてるってまだ言えないかなぁ」

そうなんだ、その人とはまだ正式にお付き合いはしてないけど、高坂専務ならきっとその人の事を大切にしてくれそう。
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