スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「その人ってどんな人ですか?」
「高坂専務と同い年ですか?」
「同い年で照れる顔が可愛いよ。でもご機嫌を損ねると左手をお見舞いしてくるから、そのギャップが面白いね」

先輩達から問われた高坂専務はその人の印象を話すけど、先輩達が顔を見合わす。

「左手でお見舞いするって、荒木編集長と同じだな」
「ああ。ほら宝条さんが三輪さんにバイクで青木印刷所に連れて行かれた時があったでしょ?」
「ええ、あの時はヘルメットを直ぐ被らされて乗せられたので、混乱しました」
「何?!三輪っちがそんな事をしてきたの?楽しそ〜」
「楽しくないですよ!スピードもありましたし、振り下ろされないか怖かったんですよ!」

田所副編集長と佐藤さんが私が三輪さんに青木印刷所に連れて行かれた経緯を話して、高坂専務は面白そうにするけど、こっちは怖かったんだから!

「水瀬編集長もその現場にいて、会議室に来て教えてくれたんです。その時に荒木編集長が会議室に出勤して、私達で経緯を話したらその場で青木印刷所に電話をかけて『黒ジャケットの男に左手をお見舞いするって伝え下さい』って言ってて」
「うわぁ、左手でお見舞いって、そういう所は姉弟そっくりだねぇ」

篠田先輩が会議室での雰囲気を話すと高坂専務が恋人と仁さんの関係性をサラっと言うと、私も先輩達も、え?!という表情になる。もしかして高坂専務の“凄く大切な人”ってー…。

「俺の“凄く大切な人”って、荒木の姉ちゃんなんだ」
「えぇぇ?!」
「荒木編集長にお姉さんがいるの?」
「一人っ子のイメージがあった」

高坂専務が“凄く大切な人”=一美さんと明かし、個室の中に驚きの声が上がり、そう言えば前に仁さんと芹澤の事で喧嘩ぽくなって仲直りして、リビングで寝ていたら仁さんがキッチンで電話をしていた会話を思い出し、だから仁さんの口から『稔との結婚がー…』とか聞こえたんだ。

「その人とご結婚されたら、高坂専務と荒木編集長って義理の兄弟になるんですね」
「なれたら良いけど、彼女の親よりも先ずは荒木に認めてもらわないとねぇ。あ、ご祝儀はスポーツ部全体で包んでね」

高坂専務は上機嫌で話し、暫くは佐藤さんと高坂専務の恋バナで盛り上がった。

「あ~この場に荒木編集長がいたら、もっと高坂専務との恋バナが盛り上がったのにな」
「静かに飲みたいタイプだし、仕方ないだろ」

田所副編集長が残念そうにしていると、隣に座る佐藤さんが慰める。

「荒木は相当強いから、一緒に飲んだらスポーツ部は全滅すると思うよ」
「俺、スポーツ部だけの飲み会なら来てくれると思ったんですよぉ」
「はいはい、田所も酔ってきたな」

高坂専務は落ち込む田所副編集長の肩をポンポンと叩く。

「どうしても荒木に来てほしいなら、“こう”すれば良いんじゃない?」
「え?!」

私は高坂専務に肩をグイッと引き寄せられて、高坂専務はスマホを取り出して私と高坂専務の2ショットを自撮りした。

あ、このやり取り、歓迎会の事を思い出す…、あの時も高坂専務に引き寄せられて写真を撮られたんだっけ。

というか、この画像を仁さんに見られたら、絶対シェアハウスに帰ったら問答無用で部屋に連れて行かれる未来が!!今日の朝方だって飲み会に行きたいって言ったら、嫉妬全開でベットの軋む音が凄かったもん!!

「その画像を送っちゃだー…」
「はい、送信〜」

ピッという音が聞こえ、お、終わった……、私は帰宅後の自分の末路を想像してがっくりすると、私と仁さんの関係性を知らない高坂専務と先輩達はジョッキを片手に笑っている。

画像を送ってからはまた皆で飲み直して、7月号のことだったり、カメラのことだったりと話しをしていると個室のドアが開いて、そこに白シャツの仁さんがいた。

「来てくれたんですね!」
「これ以上画像を送られてくるのは嫌だから」

田所副編集長が席を立って仁さんの方に行き、当の本人は少しというか大分?!機嫌が悪そうで、うう、この後が怖い。つかつかとこちらに来て、仁さんは私の隣に座る。

「セクハラで人事に報告する」
「荒木は真面目だねぇ。可愛い部下との2ショットが羨ましいんでしょ?」

高坂専務、それ以上仁さんを怒らせないで下さい!!と私は高坂専務をじぃっと見るけど、本人は面白そうに微笑むし!隣から不機嫌オーラを感じるし!もー!!周りの先輩達はどんどんお酒を飲んで上機嫌だし!私はほぼ諦めてグラスに口をつけるけど、美味しいとは感じられなかった。

「荒木編集長が来て下さったので、記念に1枚撮っても良いですか?これを逃したくないです」

秋山先輩が一眼カメラを手にして皆に見せ、私達は仁さんに顔を向ける。

「…………良いよ」
「やった!ありがとうございます!!」

仁さんが答えると秋山先輩は満面の笑みで喜び、バックから三脚を取り出してセッティングを始めるけど、仁さんと一緒に写真に写るのが嬉しいな。

皆で部屋の隅に集まって並ぶ順番を決め、前列はB班、中列はA班、製作班は後列で私は篠田先輩と一緒に両手でハートポーズを作り、仁さんは私の隣に、高坂専務は仁さんの肩に腕を回して立った。

秋山先輩が一眼カメラのタイマーをセットして急いで列に戻って、一眼カメラのタイマーの音がカシャッと鳴った。
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