スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
先輩達と会議室に戻って先ずはこの会議室の掃除と荷物の整理から始め、私は雑巾で机を拭き、篠田先輩は窓を拭きだす。

中畑さんと山田先輩は印刷機や製作班で使う荷持を纏め、佐藤さんはホワイトボードに貼られた付箋を剥がす。

「この付箋を全部剥がす日が来たな」
「あっという間の3ヶ月だった」

佐藤さんと田所副編集長はホワイトボードの文字を消し、佐藤さんが黒ペンで“祝・休刊白紙!!”と大きく書いて私達の方に振り向いた。

「秋山の一眼カメラで記念に撮ろう」
「良いですよ。荒木編集長が戻ったら“全員”で撮りたいです」

秋山先輩は嬉しそうにバックから三脚を取り出して一眼カメラを固定しようとすると、会議室のドアが開いて仁さんが入ってきた。

「丁度良かった!皆で“休刊”が白紙になった事を祝いたくて、写真を撮りますよ!」
「……分かった」

佐藤さんの拒否権の無い言葉に仁さんが手短に答え、皆でホワイトボードの前に集まる。

前回の飲み会とは違って、ホワイトボードの左にA班、中央に製作班、右にB班となり、仁さんは高橋先輩の隣に立っていて、私は篠田先輩と山田先輩の3人で逆さピースのポーズをとった。

「行きますよ!」

秋山先輩がタイマーをかけて急いでホワイトボードの前に戻って、取材班達が『はい、チーズ!!』と掛け声が会議室に響き、シャッターがカシャッと鳴った。

今回は仁さんと離れて撮ったけど、こうして皆の写真を撮れるのって良いな。

「そろそろ2階の編集部に戻って、話し合い」
「はい!」

皆で返事をしてそれぞれが自分の荷物を持ち、先輩達が会議室を出て行き、私は1番最後になった。

「私も先に戻ります」

そう言うと荷物をもってドアの方へ行く。

「真琴」

下の名前で呼ばれたのでドキッとして、振り返る。

「ここ、会議室です…」
「今は2人しかいないし。今日は残業無しと皆に伝えて」
「はい」
「それとさ…」
「はい?」
「“一緒に帰ろう”?」

仁さんが右手を差し出してきたので、私は荷物をその場に置いて仁さんに駆け寄って抱きついた。

「何処で待てば良いですか?」
「ゆっくりしたいから、藍山駅の次の駅のロータリーで待っていて」
「はい!」

見上げると仁さんの顔が近づいてきたので、瞼を閉じると唇が重なった。

想いをぶつけるように唇が重なり、離れるとお互いの熱い息がふぅと口から出る。

「先輩達が待っているので、先に行きます」
「ああ、また後で」

改めて荷物をもって会議室を出て、3ヶ月振りの2階の編集部に戻り、ドアを開けたらタウン情報部の九条さんがぱぁっと笑顔になっていたので、私は九条さんの元に駆け寄った。

「ただいまです!元気パワー、ありがとうございます!」
「おかえりなさい!」

2人で抱き合うと、近くにいる姫川編集長ははぁっと溜め息を吐く。

「まだ仕事中だから、席に戻れ!印刷所への締め切りが迫ってんだろ」
「分かってますぅ~。でも姫川編集長だってスポーツ部が戻って来たときは喜んでたじゃないですか」
「はぁ?気の所為だし、それ以上言うとお前の記事をボツにする」
「はいはい」

凄い、九条さんのメンタルって高坂専務の様に強い…。

私はスポーツ部の場所に戻り、わ…、3ヶ月振りの自分の席に座るのって新鮮というか、入社して2週間で3階の会議室にいったから、そう感じるのかも。

また編集部のドアが開いて仁さんが入ってきた瞬間、ファッション部からは雑誌がドサドサと落ちる音が聞こえたので見てみたら、女性社員の人達が仁さんを見て目をキラキラさせていた。

あ、これって入社当日の風景とダブってる。

当の仁さんはいつも通りスタスタと歩いて自分の席に座ってバックからノートとペンケースを取り出したら、水瀬編集長がとても嬉しそうに仁さんを見ていた。

「仁、おかえり」
「うん」
「夜は飲もうぜ」
「………先約があるから駄目」

仁さんは姫川編集長の誘いを断り、顔を私達に向けた。

「8月号の話し合いをやるよ。中畑からイメージの話をして」
「はい!8月号は昨年と比べー…」

私はノートとペンを取り出し、8月号に取り組み出した。
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