スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
午後3時になり、中畑さんに席を外すことを伝えて会議室を出て、階段を1階まで降りて総務課のドアをノックしてから入ると、星野さんが私に気づきニコリと微笑む。

「お待たせしてすいません」
「大丈夫ですよ。早速、行きましょうか?木村さん、宝条さんと在庫室に行ってきますね」
「いってらっしゃい」

星野さんは隣の席の男性社員に一言伝え、2人で総務課を出て、星野さんの後に続いて廊下を歩くと、白いドアの前に止まった。

「ここが在庫室で、備品や雑誌の保管場所になっています」

星野さんがドアを開け電気をつけると沢山の段ボールや細々した備品が棚に置かれ、えっと“Scoperta”の雑誌はー…あった、沢山は持てないから、創刊から5冊分くらいかな?と雑誌に手を伸ばす。

わ…、創刊の表紙の写真は野球の投手とバッターが対峙していて、投手の表情は見えないけど、バッターは投手を鋭い表情で見つめていて、シンプルな構造なのに緊張感が伝わってきた。

「素敵な表紙ですね」
「はい…、素敵ですよね。こんな素晴らしい雑誌に携われて、スポーツ部の皆さんも凄くて、早く追いつきたいです」

“Scoperta”の雑誌たちをギュッと抱きしめる。

「私も宝条さんが書く記事を楽しみにしています」
「えええ、私ので良いんですか?先輩達や荒木編集長の記事が読み応えがありますよ?」
「そうなんですか?」
「そうですよ。荒木編集長の初掲載された記事を読んだのですけど、こんなにも読み応えがあって取材先の人たちへのリクペストもあって、何よりもスポーツの魅力を伝えようと素晴らしい言葉で書いてあるんですー…、ってすいません、なんか一気に1人で喋っちゃって」

星野さんに荒木さんの記事の魅力を伝えたくて一気に喋っちゃって、気恥ずかしくなる。

「いいえ、凄く荒木編集長のことを尊敬していることが伝わりましたよ」

お互い顔を見合わせてふふっと微笑む。

「在庫室の場所を教えていただいて、ありがとうございます!」
「いつでも在庫室には入って大丈夫なので、原稿を頑張って下さいね」
「はい!」

星野さんにペコっと頭を下げて在庫室のドアを開けて廊下を歩いてると、ロビーのソファに高坂専務が座っていて、高坂専務が私に気づいて手招いたので側に行く。

「お〜宝条さん、懐かしいのを持っているね」
「実は荒木編集長から明日迄に企画書を出してと宿題があって、企画が被ったらいけないので過去の雑誌を読み返しているんです」
「へ〜、そうなんだ。そっちに座ったら?」
「はい、失礼します」

向かいにあるソファを指で指されたので、静かに座る。

「その創刊を借りてもいい?」
「どうぞ」

高坂専務に創刊号を渡すと、高坂専務は目をキラキラさせてページを捲る。

「うわぁ懐かしいな。お、こっちのページの写真は選ぶのすっげー苦労した覚えがある」
「高坂専務は最初はどんな企画の記事を書いたんですか?」
「俺はテニスかな。精神や肉体的にもハードだけど、ラケットでボールを打つ瞬間や相手が逃すまいと追いかける瞬間がたまんないんだよね」

そこから高坂専務が雑誌の話しを続け、本当にこの“Scoperta”を大切に想っている気持ちが伝わってくるなと思っていると、秘書の橘さんが入り口から入ってきて、私たちの所に来た。

「車がみえましたので、取引先に向かう時間です」
「え〜、行かなきゃ駄目?もっと宝条さんと話したいんだけどなぁ」
「遅れる訳にはいけません」
「ちぇ〜、行きますよ、行きます。じゃあ宝条さん、宿題を頑張ってね」

高坂専務は冷静に返す橘さんに対して拗ねた素振りをしつつ立ち上がり、手をひらひらさせて橘さんと一緒に四つ葉出版社を出ていった。
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