スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
2人だけの会議室は昨日のシェアハウスのリビングと同じ状況で会話も無いけど嫌じゃなく、キーボードの打ち込む音と、時折荒木さんが紙束を捲る音だけがしている。

あともう少しでまとまりそうだけど、なんかしっくりこなくて、溜め息を小さく吐いた。

「どうした?」
「えっと、この部分がしっくりこなくて」

私がノートパソコンの液晶を指で指すと、荒木さんは紙束をそっと置いて席を立ち、私の席の右側の椅子に座り、ノートパソコンを覗き込むけど、体のきょ、きょきょ距離が凄く近くて、顔がかあっと熱くなる。

当の荒木さんはそんな私には顔を向けず、手元のルーズリーフをいくつか手に取って画面と交互に顔を向け、キーボードの矢印ボタンを動かして、文字の入力位置を操作し、指を止めた。

「ここの位置からこの紙の中段辺りの文章を入力して」
「は、はい」
「アンケートの声を性別で表したいなら、男性は青、女性は赤、この場合は図を使わずにー…」

私がキーボードを打ちながらどんどん荒木さんが私の企画書を添削していき、あれだけしっくりしてなかった企画書の内容がまとまってくる。

「これが最後の段落です」
「これで大丈夫。お疲れ」

荒木さんがそう言い、私は一気に力が抜けて机に突伏する。

企画書1つ作るのにこんなにも沢山考え、それを文字で伝えなくちゃいけなくて、取材班の先輩達や荒木さんは私よりももっと沢山の企画や記事を書いてるんだもん、尊敬しちゃうよ。

このあと、シェアハウスに帰ったらお風呂にゆっくり浸かりたいし、帰りの電車で座って体を休ませたいな。すると頭の上に手がポンと置かれ、私は顔を上げる。

「一緒に帰るよ」

荒木さんがそう言うと、本人は椅子から立って上座にある荷物を整理し始め、私は会議室の時計をみると午後10時28分で中畑さんとの約束をとうに過ぎていて、そんなに時間が経っていたんだ。

急いで企画書のデータを保存してノートパソコンの電源を落とし、荷物をまとめ、2人で会議室を出て鍵を閉める。

非常灯が点いているだけの階段を降りるんだけど、うう、1人だったら心折れそうなくらい怖いし、早く帰らせる意味が分かったかもと思いながら2階に差し掛かり、そうだコンビニで水瀬編集長に凄く心配をされたっけ。

「水瀬編集長に先にあがりますって伝えて良いですか?」
「言わなくても平気」
「でも…」
「タクシーを捕まえるから行くよ」

荒木さんはどんどん階段を降りていくから、置いて行かれないように後を続いて降り、水瀬編集長、お先に失礼しますと心の中で挨拶をして、鍵を総務課の課長の机の上に置いて四つ葉出版社を出ていった。
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