スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
中に入るとそこは大きな部屋で、しかも部屋の外にあるベランダのような場所には数十席の椅子があり、なおかつそこから野球のグラウンドを見渡せるのだ。

大きな部屋にはドリンクスペースや軽食用のテーブル、いくつもの1人用のソファと大きなローテーブルも同じようにあって、こんなに凄い部屋なんて初めてなんだけど、お父さんに話をしたらどんな反応をするかな?

「試合が始まるまで、どうぞごゆっくりお過ごしください」

スーツ姿の男性が退出をすると、高坂専務は1人用のソファに座る。

「俺が考えた“社会科見学”、良いでしょ?」
「本当にここで過ごしても宜しいんですか?」
「良いって。今日はA班の分野だけど、次の“社会科見学”はB班の分野で考えてるよ。お互いの分野を知るのもいいし、俺って天才?」
「そうですね。お言葉に甘え、みんなで楽しもう」
「はい!」

高坂専務と田所副編集長がそう話しあい、それぞれみんなでドリンクを飲んだり、ベランダに出てグラウンドを眺めると、テレビとは違う臨場感があって野球の試合って早く始まらないかな。

グラウンドの側の座席にどんどん人が座っていき、試合が始まる前からお互いのファンが応援合戦をしたりとテレビでは見れない雰囲気がいいな。

私たちも用意された座席に座り、私はすぐ移動が出来るように、一番後列の通路側から2席目に座って試合開始を待ちわびる。

「取材、終わった」

みんなで後ろを振り返ると、いつもの白シャツの荒木さんが首に通行パスをぶら下げて立っていた。

「お疲れ様です、もう少しで試合が始まりますよ」
「分かった」

田所副編集長がそう言うと、荒木さんは私の右隣の空席に座り、背もたれに身体を預け、荒木さんの前に座っている高坂専務が立ち上がった。

「荒木も揃ったし、“社会科見学”を始めようか。貴重な連休中の最終日に集まってくれて、本当にありがとう。今日は思う存分に楽しんで」

それと同時に試合開始のアナウンスと音楽が鳴り、グラウンドには野球のユニフォームを着た選手たちがそれぞれの場所に立ち、打者が打席に入り、投手が1球1球投げるたびにお客さんの声がドーム内に響く。

「テレビとは全然迫力が違う…」
「あの投手は去年から投げ方を変えていて、今シーズンの成績次第で海外に挑戦と言われてる」
「選手が交代しましたが、あの選手はー…」
「足が早くて代走に起用されるのが多く、点を取るために練習メニューは下半身強化が多い」

私が質問する度に荒木さんが選手たちの特徴を詳細に教えてくれて、初めての野球観戦がとても楽しい。

「アルコールも飲めるから頼む人はいる?」

高坂専務が皆に聞くと俺も私もと続々と挙手があがり、私はどうしよう?

「この球場っておすすめなドリンクってありますか?」
「確か期間限定のフルーツ系のシェイクがあるよ。苺か蜜柑かチョコのどれにする?」
「苺が飲みたいです」
「オッケー。荒木は?」
「俺は後で原稿のまとめをしたいから、烏龍」
「水瀬みたいに真面目だねぇ。ま、俺もワインって言いたいところだけど、烏龍にしとくよ」

高坂専務は大きな部屋に入り、部屋の中に置いてある電話機でどこかにかけ始め、暫くして球場内のスタッフが大きな部屋に入り、注文をしたドリンクを運び、ベランダのドアを開けてそれぞれドリンクを手渡していく。

私に手渡しされた期間限定の苺シェイクは、山形のホイップの他に苺がカットされた物が沢山刺さっており、とても美味しそうで、皆の手元にドリンクが行き渡り、乾杯をする。

「普段仕事中だと飲めないから最高だ」
「確かに。仕事中にお客さんの飲む姿をみていると、酷だよな」

田所副編集長とその隣に座る佐藤さんが楽しそうに飲みながら話しをしていて、私もストローでシェイクを飲むと体中に甘みが広がり、普段買い物で甘い物を選べていなかったから、余計に美味しく感じるし、私たちが野球を観たり飲み物を堪能している姿を高坂専務はにこにこしながら見ていて烏龍を飲んでいる。
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