スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「あの打者が打てば逆転だよね」
「でも投手の投げるスピードがあるから、どうなんだろう」

私は顔をグラウンドに戻して、緊迫な雰囲気が伝わってくるから、ゴクリと唾を飲む。

投手が頷いてボールを投げ、打者はバットを思いっきり振るけど当たらず、捕手がボールを受けた音だけが聞こえ、場内に歓声が響き、うわ〜こんなにも凄く早いボールを投げるんだ。

佐藤さんが自分の席に戻り、田所副編集長と一緒に応援をしている。

「お〜盛り上がってるね」

高坂専務が大きな部屋から出てきて席につき、荒木さんもそれぞれの席に着いた。

「さっき凄く早いボールを投げていて、しかもボールを受ける音まで聞こえてましたよ」
「そうなんだ」

私が興奮気味に話すも、荒木さんのマイペースな返事に温度差を感じつつ、また顔をグラウンドに顔を向けたら、カサッと私の右手の甲に紙の感触があったので視線を手に向けると、荒木さんが2つ折りの小さなメモ紙を手にしていた。

「すぐ読んで」

荒木さんが小声で私に言うと、私は周りに気づかれないようにそっとメモを読む。

『帰りは高坂さんと帰って。ただシェアハウスまでは駄目だから、最寄り駅から二駅前の南◯駅に送るように伝えて。読み終わったら、俺の左腕を叩いて欲しい』

とあって、メモ紙の最後の行にまた視線を向ける。

『一緒に帰れなくて、ごめん』

パッと荒木さんの顔を見ると本人はずっと顔をグラウンドに向けているけど、私と同じで一緒に帰ることを考えてたんだ。

返事をしなきゃとメモ紙を小さく折りたたんで自分のバックに入れ、右手を荒木さんの左腕に伸ばして、そっと2回叩くと、荒木さんは烏龍が入ったカップを手に持って一気に中身を飲みほした。
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