スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◇束の間のドライブ
「ありがとうございました!」
「ど〜いたしまして。お礼は3か月のノルマで返してね」

私たちがお礼を伝えると、高坂専務はにこにこしながら返事をするけど、その笑顔が怖い。

大きな部屋から出て、施設の外に出る。

「明日から仕事だけど、現実に戻りたくないな」
「社会人のあるあるだよな。俺たちはまだ周辺で遊ぶんで、お先に失礼します。今日はありがとうございました」

田所副編集長と佐藤さんは白くて大きい野球施設の側にある遊園地エリアに行き、中畑さん達も施設内のグッズショップで購入した紙袋を片手に駅に向かい、荒木さんは取材先の人に挨拶があるからと居なくて、高坂専務と私だけがこの場にいる。

「さて、俺たちも行こうか」
「はい」

高坂専務と並んで歩いてると駐車場の場所に来たんだけど、どれも高級感がある車ばかりでビビる私をよそに、高坂専務はポケットから鍵を取り出して、高級感たっぷりの黒い車の助手席のドアを解錠して開けた。

「どうぞ」
「お邪魔します」

手荷物を抱えて助手席に乗ると、うわ椅子がふかふかで座り心地がいいんだけどと感触を楽しんでいたら高坂専務も運転席に乗り込んで、お互いシートベルトを着ける。

「何処まで行けばいい?」
「南◯駅にお願いします」
「りょ~かい。でわ、行きますか」

高坂専務がスマホをハンドルの側にあるスタンドに置き、ナビを操作して南◯駅に指定し、エンジンをかけ、車は静かに走り出した。

「駅まででいいの?家の方がいいんじゃない?」
「夕飯の買い出しをしたくて、駅が丁度いいんです」

荒木さんがメモ紙にシェアハウスの前は駄目って書いてあったし、一緒に住んでいることは内緒の約束だし守らないとな。

「遊んで帰れば良いのに、荒木は真面目だよね」

高坂専務が運転しながらいい、“一緒に帰れなくて、ごめん”と、最後の行に書かれていた文字を思い出して、メモ紙が入っているバックをキュッと握る。

「高坂専務は荒木編集長と遊ぶことはあるんですか?」
「あいつが大学に通ってる時に遊んだことがあるけど、ほぼ俺が誘ってたかな。向こうからは無いね」
「大学って、そんなに前から知り合いなんですか?」
「荒木に姉ちゃんがいるんだけど、その繋がりだよ。まさか弟が同じ会社に入社してきた時は驚いたけど」

お姉さんである荒木一美さんって、高坂専務と知り合いだったんだ。

「今は遊ぶよりかは飲みにいくのが多いな。姫川と水瀬もいて、よく4人で飲むよ。しかも荒木が一番強いから、何度世話になっているか」
「姫川編集長って九条さんとよく編集部で言い合ってて、怖いです」
「姫川はああ言う話し方しか出来ないし、損してるよな。でも仕事は熱心だしタウン情報部を長年支えてくれてるし、九条ちゃんも必死にくらいついてて仕事のパートナーとしては相性が良いんだよ」

高坂専務が2人の関係性を話す時の顔が穏やかで、信頼しているんだな。
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