スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
高坂専務が運転する車に乗って帰ることになり、野球施設の駐車場を出てから10分くらい経つと、順調に進んでいた車が渋滞にハマる。

「あちゃあ、別の道で迂回が出来るか調べるね」
「すいません、運転までしていただいてるのに。ずっと運転で疲れますよね」
「送るのは上司としての役目だし、この前は橘がきて中断しちゃったから、こうして可愛い部下とゆっくり話が出来るから疲れないよ」

か、可愛い部下って…、高坂専務はスマホのナビを使って迂回ルートを探し、車のハンドルを左に切って渋滞を抜け出す。

「こっちなら大丈夫そう」
「ありがとうございます」
「宝条さんはお友達と遊びに行くとしたら、遊園地?」
「うーん、大学の同級生の葵とは遊園地じゃなくて雑貨屋さん巡りやカフェですね。葵も出版業界に勤めていて、頑張って恋愛漫画の作家さんを見つけて一緒に本を出すって張り切ってます」
「同じ業界にいると心強くて良いねぇ。メンズ達とも遊ぶ?」

同級生で男だったら、パッと思い浮かぶのは芹澤くらいかな。

「そんなに男友達がいないですが、同級生でテレビ局のアナウンサーをしている芹澤と言う人だけですね」
「へぇアナウンサーをしているんだ。2人だけで遊ぶことはないの?」
「芹澤と2人だけなんて一切ないですし、葵やサークルの人達と混合で遊びます」
「アナウンサーって人気でかっこいいじゃん」
「私は芹澤に対しては1ミリもかっこいいとは思って無いですよ」
「こんなに言われて可哀想に、高坂、泣いちゃう。シクシク」
「ふふっ」

泣き真似する高坂専務に思わず笑ってしまう。

「高坂専務こそ、デートするお相手とお出かけしないんですか?」
「残念ながらお相手は居ないねぇ」

てっきり高坂専務にはいそうに見えるけどなぁ。

「でも、“凄く大切な人”はいるよ」

真っ直ぐ前を向きながら運転する高坂専務の声は、相手を想ってる優しい声だった。

あ、引っ越しして鍵を受け取った以来の荒木不動産の看板が見えてきて、荒木一美さんって今いるのかなと思ったら、急に車のスピードがあがり、思わず体が前に行く。

「ごめん、ごめん。信号が切り替わりそうでスピードを出しちゃった」
「安全運転でお願いします」
「りょ~かい」

高坂専務は苦笑しながらハンドルを握り、車は走り続ける。
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