スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「今日は“社会科見学”を考えていただいて、本当にありがとうございます。とても楽しかったです」
「俺はただ予約しただけだし、礼を言うなら荒木にだよ」
「えっ…」
「俺が専務室で1人で仕事をしていたら荒木が突然入ってきて、『野球の試合のチケット、取って』って言うからさ、俺と2人でデート?って聞いたら、あいつさ何て言ったと思う?」
「スポーツ部の英気を養うためじゃないんですか?」
「荒木ね、『宝条さんに野球の試合を見せてあげたい』って」

前に荒木さんと藍山駅から一緒にタクシーに乗って帰って、途中で野球施設が見えた時の会話を思い出し、あの時は『……そっか』と呟いて野球施設を見てたのに、こういうことを考えていたなんて思いもしなかった。

「『見たら企画や記事を書く時に役に立つ』と言って真面目な奴だよね。ただ、2人で行くと後々バレたら大変だし、だったらスポーツ部全員で行ったら試合が見易いんじゃない?ってなって、あの大部屋を取ったんだ。結果的に皆でああ言う雰囲気は悪くないと思ったし、予約して良かったよ」

そうだったんだ…、てっきり高坂専務が考えていたものだとずっと思っていたから、まさか荒木さんが考えていたなんて、嬉しくて気持ちが溢れそうになるのを堪えるけど、視界が滲んできて鼻を啜る。

「ちゃんとお礼を言うんだよ」
「はい……、教えていただいてありがとうございます」
「だから荒木にでしょ?」
「そうですね。ちゃんと伝えます」

2人で笑って、やがて車が南◯駅に到着し、私は助手席から降りて高坂専務が座っている運転席に回ると、窓がゆっくりと下げられた。

「気をつけてね」
「はい」
「今度は美味しいランチでも行こうね」
「検討します」

窓が上に上がると、高坂専務が運転する黒い車は駅から荒木不動産のある方向へ走り出し、私は駅に入り、荒木さんにお礼を言いたいから、起きて待っていようと電車に乗った。
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