スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「っくしゅ」

身震いし小さくくしゃみをすると、私を抱きしめる腕の力が解れ、そっと体が離れる。

「寒い?」
「ずっとここ(玄関)待ってたので」
「キッチンに行くよ」

荒木さんがコンビニの袋を拾い靴を脱いで玄関を上がり、私もメモとバックを取って2人でリビングからキッチンに移動すると、荒木さんは冷蔵庫の扉を開けて私の方に顔を向ける。

「後でお金を払うから、牛乳を使っていい?」
「いいですけど、何をするんですか?」

荒木さんはコンビニの袋を冷蔵庫に入れて牛乳を取り出し、コンロの下の引き戸を開けて小さなお鍋を取り出し、コンロにお鍋を置くと牛乳を注ぎ、火を点けた。

段々と牛乳が温まる音が聞こえ、調味料のお砂糖を少し入れ、食器棚からマグカップを2つ取り出してそれぞれにゆっくりと注ぎ、ベージュの色を私に差し出し、荒木さんは茶色いマグカップを手にして、2人でリビングに行き、それぞれソファに座る。

「いただきます」
「………」

荒木さんは無言で飲み、私もそっと一口ホットミルクを飲むと、余程身体が冷えていたのかホットミルクが全身に行き渡って温かい。

「温かいです」
「先にお風呂とか部屋に行かなかったの?」
「直ぐお礼を伝えたかったので、玄関で待つことにしました」
「そっか…」

荒木さんがそう呟き、お互いホットミルクを飲み続ける。

「今日の試合、宝条さんから見てどうだった?」
「いつもテレビでしか見たことがなかったので、こんなにもボールをキャッチする音や、バットに打つ音が響いたりするものなんだなって。あとそれぞれのファンが応援合戦していたり、田所副編集長達とー…」
「うん」

今日の出来事をずっと喋り続け、荒木さんは相槌をしながら聞いてくれる。

「グッズ売り場で可愛いキーホルダーがあって、確か球団コラボ?みたいな物でピンクの花がプリントされてて、今自分が考えた企画書の一部に追加か、別で書いてみようかなって。今日はプライベートでしたが、グッズ売り場にいる時は仕事モードになりました」
「スポーツ部だとそうなる」
「確かにそうですね。先輩達もグッズ見ながら企画のことや、仕事の話もしー…っくしゅ」
「先にお風呂に入りな」
「そうします。お先に失礼します」

マグカップを持ってキッチンのシンクで洗ってバックを持ってリビングを出て、2階の自分の部屋に向かい、部屋に入ってルームウエアとスキンケアセットを持ち、1階のお風呂に行き、準備をする。

お湯が張られるまでシャワーで身体を洗い、ボディーソープで綺麗にし、湯船に浸かると、沢山歩いた疲れが緩和されホッとし、今日のことを振り返るといっぱい楽しいことが思い出し、そして荒木さんの突然なハグを思い出した。

てっきり炒り玉子とか何か飲み物とかお礼を言ってくると思ったのに、荒木さんが選んだのはハグなんだもん。

その時のシチュエーションが浮かんで、恋愛小説では夜景の見えるところやデートスポットでハグされるのを読んだことがあるけど、2人しかいないシェアハウスという場所だったけど、嫌じゃない自分がいて、ギュッと抱きしめられて白シャツ越しに聞こえた心音も心地よかったなぁ。

お風呂からあがって着替えて自分の部屋に戻り、ベットにゴロンと横になって瞼を閉じても、ずっと抱きしめられた温もりと荒木さんの“ただいま”の優しい声が離れることができなかった。
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