スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
宝条さんがシェアハウスに引っ越ししてきて3日後、スポーツ部に行くと製作の中畑の表情が曇っていて、ずっとパソコンの画面と仮印刷されたの原稿の束を交互に見ていたので側に行く。

「どうした?」
「次の4月号のレイアウトなんですが、どうしても違和感があって」
「どのページ?」
「この広告のページからこの記事に捲るときの広告の色の強さや、文字の大きさはもっと調整すべきか、写真もこのアングルと記事にマッチしてる筈ですが、もう一つの候補の写真も捨てがたくて」

原稿を手にして一から捲って中畑が指摘する箇所をチェックし、長年レイアウトを仕上げてくれる中畑が言うのなら間違いないだろうし、このまま本格的な印刷に入る前に直そうと思い、腕時計で時間を確認するとここで作業するとバイク便の時間が間に合わない…、よし。

「今からノートパソコンを持って2人で青木印刷所に行くから、中畑も用意して」
「今からですか?!」
「ここで作業するよりかはいい。製作の皆は4月号の写真のデータを全部俺と中畑のパソコンに送って。あと残りの皆は終電前には帰って」
「分かりました、いってらっしゃい」

中畑に用意を促して編集部を出ていき、タクシーで青木印刷所に向かい、車内で青木印刷所に電話して事務室を貸してもらうように頼んだ。

「すいません、既に決めたレイアウトだったのに俺が違和感あるって言って、青木印刷所に行くことになって」
「妥協せず、最後まで向き合うのが大事。違和感を教えてくれて、ありがとう」
「……はい」

鼻を啜る中畑の肩をポンと叩いて、青木印刷所に到着し、2人で頭を下げて事務室に通してもらい、隅っこで中畑と向かい合って座ってレイアウトの直しに入る。

「目次の所から見直すよ。文字と数字の大きさと、背景の色は?」
「右側のページは大丈夫です。左は背景に透かしの写真を入れてるので、重なっている文字を太くしたいです」
「次、3ページの巻頭記事はー…、6ページのここは?」
「ここはこの写真の別アングルで行きたいです。この広告のカラーの強さをー…」
「一旦試し刷りをして、濃さを確認」
「はい」

1ページ1ページを見直しをして、送って貰った写真を差し替えたり、試し刷りをして、あと少しで全部が終わりそうだ。

「この編集部メンバーの名前の欄で最後です」
「………分かった。お疲れ」

中畑はノートパソコンに突っ伏し、俺も腕を上に伸ばして気分を整え、腕時計を見ると深夜1時を指している。

「ご飯を買ってくるから、印刷所の人にお礼を伝えて」

中畑は顔を上げると、目を真っ赤にして泣いていた。

「はい…、今から機械室に行きます」
「うん、俺もこのあと言うから、もう大丈夫」
「………」

大きな涙の粒を流し黙って何度も頷く中畑の頭に手を置いて髪をクシャッとして印刷所を出ていき、印刷所近くの牛丼チェーン店で人数分の牛丼を買って戻り、事務室にて手伝ってくれた機械室の皆さんと俺たちで牛丼を食べる。

「いや〜久しぶりに深夜に牛丼を食べるけど、この時間ってのがいいよな」
「学生の頃を思い出すね」
「本当に助かりました。ありがとうございます」

お礼を伝えると、機械室の皆さんは微笑む。

「良いって。荒木さんの頼みだし、大丈夫。季刊の時もずっと付き合ってもらったし、荒木さんの所の雑誌を刷れるのは誇りだよ。中畑さんもさ、何度でも付き合うよ。熱々のうちにいっぱい食べな」
「あり…がとうご…ざ…います」

中畑はずっと泣きながら牛丼を食べていて、中畑は製作としていい経験したなと思いながら俺も牛丼を食べ、青木印刷所にタクシーを2台呼んでそこで中畑と別行動で帰宅した。
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