スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
もうすぐ着くなと思っていたらスマホが揺れ、画面を開いたら高坂さんと宝条さんのツーショットの画像と、続けてメッセージを受信した。

『歓迎会に来ないの?』

短い文章だけなら断りも言えるけど、この画像…イラッとする。しかもさり気なく肩に手を置いてるし……。

角を曲がればBarだけど思いとどまって四つ葉の歓迎会に指定している居酒屋に向けて早歩きで向かい、お店の中に入って個室の場所を聞き部屋のドアを開けたら、高坂さんと宝条さんの距離が近いので更に苛立った。

周囲は俺が来たことに騒いでるけど、俺は無視して高坂さんを外に呼び出して、電柱の側まで来ると、話をきり出す。

「あの画像、消して」
「え〜、消すの?せっかく可愛い子と写真を撮れたのに」

その言葉にカチンときて、高坂さんの胸倉を掴んだら宝条さんが俺たちの所に駆け寄ってきて止めに入るけど、まだおちゃらける高坂さんに画像を消すようにもう一度手の力を込めると、宝条さんが俺にやめるよう言うから、俺ってなんでこんな顔を宝条さんにさせたんだろうと少し冷静になり、手を離して高坂さんから画像を消してもらい、ホッとする。

高坂さんが俺の下の名前を言いそうになるのを寸前で止め、高坂さんを店に戻させて言うのを意を決した。

「俺のフルネーム、荒木“仁”」

信じられない目で俺を見る宝条さんに名刺を渡し、“仁”=俺と分からせてシェアハウスに一緒に住むことをどうするか、距離を開くような感じで言うも返ってきた宝条さんの言葉に嬉しい自分がいて、宝条さんの頭に手を置いたら春の風が俺たちを包むように吹いて、なんだろ…この気持ち。

宝条さんと別行動にして改めてBarに向かい、中に入ったらスーツ姿の姫川と水瀬がいて、3人だけって久しぶりかもと思い、いつものようにロックを出してもらう。

「お疲れ」
「社長の挨拶、すげー長すぎてしんどかったな」
「高坂さんの話もじゃない?」

それぞれの好みの酒が入ったグラスで乾杯し、話題は新入社員の2人になった。

「まさか高坂に女の部下がつくなんてな」
「長年高坂さんの秘書をしていた人が体調不良らしく、回復するまで姪っ子さんが代わりをするみたい。仁の所の宝条さんはどうなの?」
「中畑につけたし、暫く基礎を叩き込む」
「長く続いてくれると良いよね」

水瀬がゆっくりカクテルを飲み、確かに四つ葉の編集部は新卒で入っても続かなくて退職が多いし、中途採用しても入れ替わりが激しいし、俺が入社した年も5人消えていったな。

「憧れだけじゃ続かないし、後は本人次第」
「そうだよね」
「面接で荒木の所に行きたいって言った時は、マジかよって思ったぞ」
「俺も理由を聞くまでは姫川と同意見」

静かにロックを飲み、グラスをコトンと置く。

「ね。俺の所はファッションが好きって決まり文句だけど、仁の記事を具体的な所を言うくらいだし、初心者であっても沢山の事を経験して吸収して成長するんじゃない?九条だって姫川の所に行ってから成長してるでしょ?」
「まだ小学5年が良い言葉を使うぞ」
「田所と中畑が背後で姫川と九条さんがやり合ってて辛いって最初は言ってたけど、もう慣れたって」
「あぁ?あれは回りくどい書く九条が悪いんだよ」
「ねぇ仁、姫川と九条とのやり取りをここで言わなくてもよくない?」
「悪い」

新しく注いでもらったロックを静かに飲み、この日は久しぶりの同い年3人組の雰囲気を楽しんだ。
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