スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「高坂専務と荒木編集長、今良いですか?先日行った取材先のバレーボールチームのことで共有したいことがあって」
「良いよ」

佐藤が俺の近くのソファに座ると顔をベランダの方へ向けて、大部屋には俺たちだけになったことを確認した。

「取材で何かあった?」
「取材というか…、実はさっきグッズショップに立ち寄ってお土産を買って、そろそろここに戻ろうと宝条さんを探したんですが、そこに一緒にいた男性が気になって…」

佐藤の口から宝条さんが男といたと聞き、眉がピクッとなる。

「大学の同級生でアナウンサーをしている“芹澤”という名前だと宝条さんから聞き、同級生にアナウンサーがいるんだって思ったんです」
「佐藤からみて、その芹澤ってメンズはどう感じた?」
「危険です」

2人の会話を聞き、佐藤からその芹澤の印象が危険という言葉が気になる。

「どうしてそう思った?」

俺はペンを置いて、佐藤に聞く。

「宝条さんを見る目が同級生だからというより、好意を含むような感じです。あと職業柄アナウンサーだと世間の注目がありますし、拗れると両者にダメージが起こりえますので、あまり宝条さんを芹澤に接触させるのは控えたほうがいいですね」
「そっかぁ、佐藤が言うなら間違いないね」
「すいません、いきなりこんな話をしだして」
「い〜や、俺は佐藤の見る目を信じてるし」

高坂さんが佐藤の言葉に頷く気持ちが俺も分かる。

「俺、以前休刊の話で宝条さんが“Scoperta”を素晴らしい雑誌って言った時、この雑誌が本当に好きなんだなって嬉しかったんです。初心者だけどいつも遅くまで頑張ってるし、これからもスポーツ部の一員でいて欲しいから、ああいう男に宝条さんの編集者人生を台無しにされたくないなって思いました」

3人でベランダ外の椅子に座って野球観戦を楽しむ宝条さんを見る。

「あと、宝条さんが荒木編集長の記事を読むように芹澤に言ったことも嬉しかったです」
「どんな風に?」

どうして俺の記事なのか気になって質問した。

「自分の記事よりも特に荒木編集長のスポーツを支える人の記事は感動するくらい素晴らしいから絶対読んでね!って芹澤に言ってて、その時の芹澤の顔が少しピクって引きつってたのを俺は見逃さなかったです」
「へぇ~宝条さんもやるじゃん」
「話してくれてありがとう」
「いいえ。先に戻ります」

佐藤が先に戻り、大部屋に俺と高坂さんだけになった。

「で、仁はどうしたい?」
「俺も編集者人生を台無しにさせたくないし、スポーツ部の皆を守りたい」

休刊を告げた日の寝る前、感じた気持ちをストレートに言った。

「ようやく素直に自分の気持ちを言えたじゃん」
「そう?」
「うん。休刊に反対だって言ってたけど具体的じゃなかったし、俺より長年スポーツ部を守ってきたのは仁だし、これからも守ってくれるの信じてる」
「……勿論」

高坂さんが俺の肩をポンと叩いて、2人でベランダ外の皆を見る。

「いいメンバーだな」
「ああ、俺もそう思う」
「佐藤の話に戻るけど、宝条さんに探りを入れてみるよ」
「どうやって?」
「今日、車で来てるしドライブがてら聞くよ。この前橘に邪魔されて話が途中だったし、可愛い部下を変な男に取られたくないし」
「………分かった」

可愛い部下って言い方と2人きりのドライブは嫌だなと思う自分がいて、でも実際宝条さんが芹澤という奴をどう思ってるか気にはなるし、ここはお願いするしかないか。

「一旦メモで高坂さんと一緒に帰ってと伝える。向こうが了承したって分かるように、俺が烏龍を全部飲んだのをサインだと思って」
「りょ〜かい」

小さなメモに帰りのことと送ってもらう場所を指定し、最後に一緒に帰れなくてごめんと書いてメモを折りたたみ、荷物を纏めて烏龍を持ってベランダ外の席に戻り、メモをそっと宝条さんに渡し、顔を前に向けて返答を待っていたら左腕が小さく2回叩かれて、高坂さんに合図として烏龍を全部飲みほし、俺は取材相手にお礼を伝えるために先に退出し、高坂さんに宝条さんを託した。
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