夫婦ですが何か?Ⅱ
ああ、失敗。
そんな事を思って苦々しい表情で冷蔵庫を閉めた。
正確には冷氷室というのか、すっかり空なそこに落胆し補充し忘れた水を今更満たして溜め息をつく。
かといって今更補充しても一瞬で氷が出来るわけでもなく、これはひとっ走りコンビニで調達かと財布を手にする。
久々にこちらに出てきた両親は流れのままに我が家に滞在することになり、そうとなれば親子でゆっくりお酒でも酌み交わそうという流れにもなる。
食事は程よく準備したというのに己の不備で不足していた氷に気がついて現状。
飽きることなく孫の相手をしている両親を確認するとその身を廊下に出しかけながら声をかけた。
「ちょっと近くのコンビニに足りない物買ってくるから」
「あら、気をつけて行きなさいよ?もう結構暗いんだし」
「本当に近くだから、」
心配する程の距離ではないと呆れた声で返すと躊躇う事なく玄関に向かう。
携帯と財布だけを手に外に出て、誰に遭遇するでもなくエレベーターに乗り込むと体を壁に預けてしまう。
下降する浮遊感に身を任し、特別何かを考えるでもなくぼんやりと数字を見つめ。
程なく1階が表示されると外気を取り込みながら開く扉。
そこから颯爽と歩きだしてエントランスを歩きぬける。
すでに遠巻きに捉えているエントランスのガラス戸から入りこんできたのは、つい数時間前も遭遇し私に謎の接触ばかり計ってくる男、榊で。
一瞬また訳の分からない接触で悩ませてくるのかと多少警戒してその身を近づける。
向こうも私に気がついたらしく一瞬はお互いの視線が絡んで、いよいよ何か言われるかとすれ違う瞬間を迎えたけれど。
あら・・・取り越し苦労。
思いがけずそのまますれ違って去っていく姿に拍子抜けし、本当につかめない男だと眉根を寄せる。
そして難なくマンションの外に身を出し数段の階段を降りかけるとほぼ同時に、向かいからその階段を登り始めた姿と視線が絡んだ。
「こんばんは、」
「こんばんは」
視線が絡むとふわり笑みを浮かべて挨拶してきたのは新崎に威嚇された住人の男性。
でも今日はその横に小学生には上がっていなさそうな女の子の姿が並んでいる。
しっかりと手を繋いでいるところを見るとこの子がこの前言っていた娘さんなのだろう。