夫婦ですが何か?Ⅱ
「急がなくても・・・いいでしょ?旦那も・・・出かけたみたいだし」
「実家の両親が来てますので、」
「手短にでも・・・楽しむことできるよ。旦那だって・・・疑惑的な事・・・彼女としてたんでしょ?」
にっこりと微笑んで問題の彼女の部屋の扉を指さす男に目を細める。
つまり・・・あの騒ぎもしっかり見られていたという事だろうか。
「・・・・・疑惑は疑惑です。それによって私が似たような疑惑をあなたと起こす必要は一切ないかと、」
「ああ、じゃあ・・・・あなたが好きなんです」
「・・・・・何のつもりですか?」
「こんな風に・・・愛の告白をすれば多少は心が動くかと、」
「・・・・心無い一言に心が動かされるほど単純に出来た女じゃございませんので」
言い切るといよいよ邪魔だと自らの力で押しのけて歩きだす。
やっと彼の背後にその身を動かしたのに、そう簡単に諦めるような男ではないらしい。
腕に絡み付いてきた指先が力任せにその身を引き戻し、勢いのまま壁に縫い付けられると至近距離に寄った顔。
無表情。
「・・・・・本当に面白い人だなぁ。・・・大胆無防備なのに誘ってるわけでもなくて、天然とも違って頭もいいし変に忠誠心も強い・・・・、それとも・・・あいつに何か弱みを?」
「・・・・・惚れた弱みでしょうか?」
「フハッ・・・それはあいつがあなたに握られている物みたいだけど、」
「まぁ・・・がっちりと」
自分の片手をギュッギュッと握って開いてしてそれを示すと、その手の動きを確認した男が今までとは違う感じに失笑してゆっくり視線を私に戻す。
どこか和らいだそれにどういう意図があるのか疑問に感じながら見つめ返すと、気を取り直したかのように距離を狭め近づく顔。
特別それに抵抗も拒絶もせずに目を閉じることもなく平然としていれば、触れるギリギリで吐かれた息。
そしてゆっくり離れ捉えた表情は何とも不満そうな葛藤交じりの物。
「本当・・・やりがいがない、」
「まぁ、キスくらいされたところで痛くも痒くも・・・」
「・・・・・・そんな事言ってると・・・・・
いつか、痛い目みますよ・・・・」
「・・・・・」
「いつだって、あなたに都合よく事が動くわけじゃない。あいつが四六時中守ってくれるナイトじゃあるまいし、もっと誰に対しても警戒を置くべきだ」
「・・・・ご忠告・・・どうも、」
礼ではないけれど告げられた警告に返事を返すと、今までの迫りは何だったのか?と問いたくなるほどあっさり解放された体。
それでも壁に寄りかかったまま動向見守れば、その姿は振り返るでもなくエレベーターの方へ歩き去って。
結局・・・彼は何をしたいのだろう?と最終的に首を傾げて自室に戻った。