夫婦ですが何か?Ⅱ
「ほら、ご挨拶しような」
そう父親に促された少女が少し身を縮こませるとか細い声で『こんばんは』と口にする。
私が初対面であるからなのか、はたまた威圧的に感じたのかその視線は絡まずどこか怯んだようにも感じてしまう。
そんな娘の態度に苦笑いで頭を下げる姿に気にしないように笑みを浮かべ会釈を返すと本来の目的に戻って歩き始める。
すでに街灯灯る薄暗さ。
日が落ちればあっさり暗くなるものだと、夜風を感じながら紺色に近い空を見上げていると。
ポケットの中で震えだした携帯。
素早くとりだせば着信の表示で名前を確認して苦笑い。
さて、出ようか出まいかと迷ってはみたものの、仕方なしに応答をタップして耳に当てた。
『千麻ちゃん~・・・寂しい~・・・』
「久々の実家で団欒してるのに『寂しい』はないのでは?」
『28の男が今更実家帰ったって微笑ましくもないんだよ!?夕飯の手伝いしても『使えない』って追い出されるし、妹達には『出戻り~』って笑われるしぃ・・・』
「正解なので心身に受け止めるしかないんじゃないですか?」
『とか言って、俺と普通に話せるくらいにもう怒ってないんじゃんよ!?』
「・・・・怒ってほしいのなら速攻で通話切りますが?」
『すみません・・・、切らないでください・・・』
今にも泣きだしそうな声だな。と密かに口の端をあげながら歩いて会話し、そう遠くないコンビニを視界に捉えながら歩みを進める。
『で?・・・今は何してたの?』
「・・・・自分の不備でウォーキングを」
『はっ?何?ウォーキング?』
「氷を買いにコンビニに向かってます。朝水を補充するの忘れてて製氷室が空っぽだったんですよ」
そう言えば朝から今日はバタバタと忙しくしていたから忘れても仕方ないか。と自分を正当化するような思考をしながらコンビニに足を踏み入れた瞬間。
『っーーだからぁ、何でそんな無防備!?』
「はっ?」
『もうこんなに暗いのに何で一人で出歩いてるのさ!?』
「出歩くって・・・近所のコンビニですよ?あなたも知っての通りのあの距離ーー」
『馬鹿っ!!』
あまりの大きな声に携帯を耳から離して眉根を寄せる。
そして再度近づけると溜め息交じりに声を響かせながら店内を歩き始めた。