夫婦ですが何か?Ⅱ
どこかスッキリとした感覚で通話を終えた携帯の角を意味なく唇に押し当てて。
夜風が早く部屋に入りなさい。と、ばかりに私の背中を押すように吹き抜ける。
それに従い静かに住み慣れた空間に戻ると、さして眠くもない体をのらりくらりとベッドに戻した。
クィーンサイズのベッドは1人では大きすぎる。
自由気ままに寝返り打って自らのペースで眠れるではないか。
そう思って気分を高めばさりと倒れこんだベッドからフワリと巻き上がるのは彼の気配。
匂いに過敏になる。
その匂いが記憶を鮮明にさせて。
自分以外存在しない広いベッドの中で、何故か身を置いてしまうのは自分の定位置。
体は中央を向くように横たわって、その目には存在しない者の残像を映し込んでいる。
彼はだいたい・・・、私の方を向いて眠りにつく。
たまに背中を向けている時もあるけれど、あれはあれで見るのが好き。
シャツ越しに浮き出る肩甲骨とか、軽く丸めた体で浮かぶ背骨とか。
見ていると不意に触れたくなって。
こっちを見ろ!と、言わんばかりに背後から抱きしめ腹部で指先を絡めて触れる。
程よく引き締まった腹筋を服の上からでも感じ、デスクワークメインのくせに。と、羨ましく思うと同時にその身が動きを見せるのだ。
絡むのは困った様な笑みと柔らかいグリーンアイで、この時ばかりは昔から変わらない幼い印象与える表情をする。
そして引き寄せられ更に彼の匂い鮮烈に、もう絶対に年下に感じない包容力とぬくもりに安堵し力が抜ける。
『おやすみ、千麻ちゃん・・・』
ああ、そうね。
このベッドでは一人で眠れないわね・・・ダーリン。
このベッドの上での印象は強烈過ぎて。
くだらないやり取りも一言一句、隅から隈なく全て思いだせてしまいそうな。
それこそ・・・最初の夜の事も鮮明だ。
幼さ残る悪戯な笑みで見下ろした姿がこれから始まる【夫婦ごっこ】に期待に満ちた目を揺らして。
呆れて突っぱねてのらりくらりとかわしていたのに、どうだろう?結局こうして彼の望むままに【ごっこ】ではなく夫婦になってしまっている。
なくてはならない・・・・手の届く範囲にいないと不安になるほど。
私はいつからこんなに誰かに執着するようになった?