夫婦ですが何か?Ⅱ
一応家主の許可付の入室。
それでもどこか気を遣いながら静かに扉を開くと中に入りこんだ。
背後で小さく扉がカチャリと光を閉ざして、自分の家とは違う空気に慣れない感覚を抱きながら奥へと進む。
もう一度は踏み込んだ事のあるリビングに突き進み、綺麗に片付いている室内に好感を抱くほど。
几帳面な性格なのか本なんかも綺麗に高さを合わせて並べられ、食器も洗いカゴに溜まる事なく棚に収納されている。
本来がこういう人であるのなら、この前積み重なっていた書類の山が異常であったのだと納得して笑う。
今日はすっきりとしたテーブルの上。
そう言えば今日はスーツ姿であったけれど一体どんな仕事をしている人なのか。
スーツの質感も割と上質な物で、この部屋に住むくらいなのだからそれなりの収入はあるのだろう。
部屋の家具なんかも男の気ままな一人暮らしなのか高くてオシャレな物でシンプルに統一されている。
センスのいい部屋。
少し恭司の部屋に雰囲気が似ていると感じながら、翠姫を床に下ろすと預かった上着を近くの椅子にかけようとその身を動かした。
ある程度形を整え皺にならないようにと歩きながら上着を広げると、うっかり逆さまに持ち上げたらしくパラパラとポケットの中身が床に落ちる。
万年筆や小銭入れ、それらを捉えて溜め息をつきながら拾い上げて。
床に散らばった物を近いところから拾い上げて、順調に拾い上げていた指先が不意にピタリと止まってしまう。
そういえば・・・、さっきポケットに手を入れた時に紙の感触を得ていた。
それがこれだろうか。
意識過剰?
これも不安や疑惑のカオスからくる過剰で無理矢理な予測?
せっかく治まった動悸がまた徐々に強まっていき、それに触れることを躊躇っている指先が震える。
ああ、前もこの感じをこの部屋で感じたというのに。
指先を少し動かせば触れること可能な落下物。
なんて事のない宛名のない白い封筒。
でも少し厚みのある内容物と封筒の形状が類似する。
あの・・・・悪意の詰まったそれに。
そして瞬時に回想するのは前回この部屋に来た時に確認しそこなったあの写真。
寸でで新崎に阻まれ見ることは叶わなかった。
どこか牽制するような言葉で威圧されたあの瞬間、言い様のない恐怖を感じたのだった。