夫婦ですが何か?Ⅱ
でも、でもだ・・・新崎は昨夜の犯人ではなかった。
私は確かに傷痕残るほどの勢いと力で噛みついたのに新崎の腕には傷一つなく、腕を痛めている感じもなかった。
でも、もし・・・犯人が一人ではなかったら?
昨日の突発的な犯行は本当にただの通りすがりの物で、写真の犯人とは別のものであったら?
だとしたら、まだ新崎への疑惑も0として掻き消せるものでないと言える。
ああ、どうしよう。
疑心暗鬼。
疑ったり怯えたり・・・、もう嫌なのに、心底疲れたのに。
これだと答えを断定して警戒を最大に集中して安心して過ごしたいのに。
目が回る葛藤に頭を抱えてその場にしゃがみ込む。
そして目を細めて同じ位置に落ちている封筒を見つめ再度その指先を伸ばしていく。
これはプライバシーの侵害だろう。
でもまるで再度のチャンスのように訪れた確認の場。
まだ不在の新崎に今度は邪魔されることもないのだ。
そう意を決するとそっと封筒を拾い上げてその厚みにゾクリとする。
やはり、あの感触に似ていると。
中身は多分写真である。
それを理解して宛名面から返してみれば、ただ折ってあるだけで封はされていないそれ。
一瞬心臓が変な跳ね方をして、不意に背後が気になり振り返る。
でもまだ新崎は榊とエレベーターホールで話しこんでいるらしい。
扉が動く気配も人が近づく気配もないと悟ると震える手で手早く開封し中身を取り出した。
次の瞬間、思わず手から写真が零れ落ちて床に四方に散って広がる。
でも叫ばなかった自分は偉いと口元を覆って、暴れる心臓が飛び出してしまわないようにグッと息を飲み込んだ。
ああ、やっぱり・・・。
ストーカーの犯人は・・・あなただったんですか?
散らばった写真はどれも目線がカメラを向いていない自分の写真で、すでに手元に渡ったそれらと違わない。
一瞬は思考がパンクして真っ白になってただその目に写真を焼き付けて。
でも次の瞬間には回復した意識で危険予測。
ここにはいられない。
新崎が戻る前に早く出なくては。
そう判断がつくのに体が震えてままならず、それでも落ちている写真をかき集めると適当に封筒に詰め込みその手に握る。
もう、彼も着くはず。
エントランスまで降りて彼と合流しよう。
咄嗟にそんな判断をつけると遊んでいた翠姫を抱え上げて玄関に走った。