夫婦ですが何か?Ⅱ





慌てているせいか履きにくい靴にイライラとし、勢いのままドアノブを掴んだけれど一瞬で冷静に返り扉に張り付く。


今のところ人の気配はない。


近づいてくるような靴音もない。


それを確認しそっと覗き込むように扉を開けても目に映るのは誰もいないフロアの廊下。


それに小さく安堵すると素早くその身を出して思いついていた合流を図って動きだしたのに。


忘れていた。


新崎と榊がいるのはエレベーターホールなのだ。


エレベーターは使えない。


真逆に行けば非常階段はある。


階段で一階下に降りてエレベーターに乗る?


でも色々と懸念すべき予測がいくつも浮上して混乱する。


もし、私が移動中に新崎に気付かれ追いかけられたら。とか、エントランスに降りても彼とうまく合流出来なかったら?


写真は持ってきてしまった。


私の不在に写真の有無とくれば新崎だって行動するに決まってる。


何より心配なのが・・・・。


翠姫が一緒だという事。


家になんて置いておけない。


でも一緒に逃げるのもリスクが高い。


翠姫を抱えたままでは私だってまともに動きが取れないのも本当。


どうしたら・・・・。



「・・っ・・・・」



一瞬酷く緊張して、驚愕の表情で振り返ってしまった。


ガチャリと音がして急に入りこんだ人の気配に心底怯えた。


でも、その姿を捉えた瞬間に思わず駆け寄って逆にその人を驚かせたと思う。



「っ・・・何?」


「お願いがあります。今は詳しく説明できないんですけど少しの間でいいので翠姫を預かっててくれませんか?」



決して大きな声でなく、でもかなりの早口でそう告げると翠姫を手渡すように差し出して。


困惑しながらも受け取ったのは決してまだ蟠り解けていないもう一人の住人。


彼と何やら関係のある彼女だ。


なにか所用で外に出るつもりだったのか、玄関からぼんやりと出てきた姿に突如縋ったのだ。


何事か把握できない彼女が双眸見開き私を見つめ、分からないけれど受け取った翠姫を静かに確認した。


大丈夫。


この人は信用できる。


彼が信用置いている人だから・・・信用する。


そう自分に納得して頷くと、困惑する彼女に背中を向けて動きだす。



「ちょっと、何?大丈夫なの?」



走り去る私に多分私を案じての言葉を向けてくる彼女に振り返り視線を絡める。


でも言葉を返す余裕もなく非常階段に走るともつれそうな足を必死に堪えて階下のエレベーターホールに向かって全力疾走。


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