夫婦ですが何か?Ⅱ
確かに彼が言った通りに自分が住んでいるフロアよりは値段相応の造りなのだろう。
決して見下したとかでなく同じマンションでの値段さはこういう部分もあるのか。と客観的に思っただけの事。
そう考えればやはり同フロアに身を置く面々の収入の良さを理解して、一体何をしての稼ぎなのかと幾度となく思ったことを浮上させグラスに水を注ぎ始める。
「・・・・・・」
あ・・れ・・・?
不意に気がついたそれに意識が走る。
そうしてグラスから水が溢れて慌てて水道を静止する。
そして静かになったそこに時計の針が異様に大きく聞こえ、自分の浮上した疑問に思考が占められる。
少し・・・引っかかったのだ。
彼が私の住むフロアとの対比の言葉に。
それに伴って過去の彼の言動も。
私は・・・この人の住むフロアを今日この時まで知らなかった。
それだけ付き合いも薄くて、この人もそうであっておかしくないのに発言からするとこの人は私の住む階を知っているような口ぶりだ。
いや、この人の奥さんが噂するくらい彼は有名だったのならその階を知っていても不思議はない。
でも、知っていると実際見ているとは違う気がする。
5階の住人が特別知り合いがいない限り私達の階まで来ることがあるだろうか?
でも・・・エレベーターホールの造りを知っている・・・。
そして、不思議なのだ。
この人は以前新崎に気をつけろと促してきた。
その時こう言った筈・・・
『隣人さん』
新崎が引っ越してきたのはあの日。
まさに新崎がこの人を威嚇した日だ。
いくら奥さんの噂が敏感であっても写真を取ってその姿を回覧しているわけでもない。
そして私と一緒にいようがあの時はエントランス。
この人には新崎が隣人である事なんて知る方法があったのだろうか?
仮にも、何らかの方法でそれを知っていたとしても・・・。
新崎が私をつけていた?
あの時はその言葉の内容にしか意識が働かなかったけれど、よくよく考えれば不思議なのだ。
それを確認したこの人も、新崎がつけていたと言いきるほどに私と新崎と場所を違えて同行していた事になる。
確か・・・・買い出しに行ったのは普通の会社員であるならまだ職場に身を置く時間だった筈。
なのに・・・、何故この人は・・・私と新崎をつけるような真似を?