夫婦ですが何か?Ⅱ
また疑心暗鬼のなせる業だろうか?
ちょっとした疑問を自分に結び付けて。
さっきまで激しく新崎を疑っていて、証拠づけるような写真も彼の上着から得たというのに。
ああ、でも・・・。
何か・・・見落としてる。
考えてみて・・・最初の写真は榊から手渡されたのだ。
その時は榊を疑って、似たような物を新崎の上着から得た。
でも決して原本の証拠を得たわけでない。
これも一部に過ぎないのだ。
そして私は一番大切な部分を見落としていた気がする。
もし本当に彼が私に秘密裏に犯人を探してくれていたとしたら、そんな危険な隣人に気付かぬ筈もなく、無警戒に私を隣接する部屋に置いたりしないのではないか?
むしろ、いくら私が不満を申し立てても彼は新崎に対して反応を示さなかった。
榊に対してもそうだ、警戒を促すような言葉を口にしてもそれ止まり。
つまりは接触は望ましく無くても本当の意味で危険とみなしていなかった?
いけない・・・。
ここに来て私の頭の迷走が終わりを告げそうだ。
最悪な場面でやっと持ち前の推理力と判断力が回帰して焦燥感に満ちる。
『警告です。・・・・あなたは色々と間違えてる。信じるべきものと、そうでないもの・・・・。
疑うべきは・・・親身で無害な存在かも・・・』
榊の言葉が頭に響く。
本当だ・・・・。
色々と間違っている。
多分今度の予想は限りなく黒だ。
でもこのタイミングでの確信は得たくなかったというのに。
気がついた瞬間に視界に入った栓抜きを握ってポケットに忍ばせた。
そのタイミングを図ったようにポケットで震えはじめた携帯の画面を確認する。
表示された【副社長】の文字に今すぐ縋りたい気持ちで目を細め、応答ボタンに指先を伸ばした瞬間。
「・・・・コップ・・・分かりませんでしたか?」
「・・・っ・・・、いえ・・・・すみません。うっかり床に水を零してしまって・・・」
かけられた声に内心は酷く緊張して振り返る。
変わらぬ気の良さそうな笑みで立つその人が急に悪意に満ちて見えて心が怯みそうになる。
ああ、もう一つ・・・確信に似た疑惑。
さっき玄関でよろめいたこの人を支えた時に苦悶の表情を浮かべたのだ。
貧血によるそれにしては酷く辛そうそうな、もっと言えば・・・苦痛による表情。
あの時私が掴んだのは左腕と肩だったはず。