夫婦ですが何か?Ⅱ
提案の言葉を静かに聞き入れる男の揺れ動く様を確認する。
戸惑いながらも納得するような。
自分には都合の良い反応。
彼の中でまだ犯罪意識や懺悔の意思があるならその部分を強く揺すって提案を促して。
「・・・そう・・・ですね・・・。そう・・・・あなたの言う事がもっともで・・・・・とてもありがたい申し出だ・・・」
納得するように頷いてこちらの申し出に好感触である男。
事を荒げずに済むなら確かに今後の事を考えても申し出に乗る方が得策なのだ。
多少なりとも理性的な部分を見せてもいた人だから【もしや】として口にしたけれど、本当にこのまま上手く纏まるのではないだろうか?
「では・・・・この示談の形で納得していただけますか?」
「・・・・きっと・・・それが一番なんですよね?」
「お約束します。・・・・もう二度と・・・このような事態招くことないというのなら今までの事は全て無に帰すと・・・」
一瞬の静寂。
酷く緊張する一瞬。
ただ無表情で何かを考え込むこの人の決断はどちらに下るのか。
早く・・・・この身を扉の外に出したいというのに。
「・・・・分かりました」
「・・・・・」
「・・・・・・本当に・・・・ご迷惑ばかりおかけして・・・」
「・・・・では・・・私が帰宅することを・・・納得していただけますね?」
言いながら目に見えてはっきりと一歩身を引くと、特別様子を変えるでもなく申し訳ない感じに私を見つめる男。
引き止める気も追う気もない。
そういう事なんだろうか?
つまりは本当に示談に応じる?
まだどこか半信半疑で玄関にゆっくりと後退して扉の目前でその身を返した。
不安はあれどもう扉さえ出てしまえばどうにでもなる。
今はとにかくこの身を解放することが最優先なのだ。
帰宅を許された体で扉のノブを握り押して開く。
だけども開くと思った扉がガチャリと鈍い音を立てて通せんぼし押し返された。
一瞬何事かと視線走らせれば見事施錠されていた上下2つの鍵。
つまり、この部屋に私を招いた時点では逃がす気などさらさらなかった事を物語る。
一瞬にして緊張感の再帰。
どこか焦った感情で上のカギを開錠した瞬間に明らかに攻撃的な力に振り回され床に沈んだ。
どうやって倒されたのかよく分からない。
ただ心臓の音が耳の奥から聞こえるように大きく強く聞こえる。
そして私をねじ伏せ見下ろす男が正気でないのは嫌ってほど理解した。