夫婦ですが何か?Ⅱ





案の定眉根を寄せ引きつったような表情を見せた男は所詮小物だ。


大して度胸もない癖に感情任せに動くただの愚か者。


だからこそ変化球に弱くてすぐに動揺を姿に現す。



「そうやって・・・被害妄想に染まって生きてればいい。意思の弱さも全部他人のせいにして・・・」


「煩いっ、黙れ!!」


「自分より下だと思う存在だけにはこうやって一方的な力だけでねじ伏せてーー」



あっ・・・耳の奥がキンッとする。


再度振り下ろされた力が嫌な感じに耳に強く作用して、さすがに目が眩みつつもぼやける目で睨み返す。


絶対に怯んだ顔なんて見せてやるもんか。


殴られても、犯されても、殺されても・・・・。


本当は精神の弱いこの男に一生残るような爪跡のように自分が害した存在の恨みを焼き付けてやる。


女の恨みは恐いのですよ?


特に私は・・・・、




彼を当てもない一方的な視感で貶した人間を絶対に許さない。




「あなたなんて、

・・・・・いくら積まれても誘惑なんてお断り」




言い切って口の端をきゅっと上げる。


今まで散々『誘惑した』という言い分に最大級の否定を嫌味に乗せて響かせた。


唖然とした表情を捉え、すぐに相手が憤怒に染まるのを確認する。


馬鹿ですね・・・。


人は激情する程・・・・案外隙だらけなんですよ?


我を忘れたように私の首に伸びてきた指先にさすがに一瞬は心が焦り、それでも両手が私に向く事で自分の手指も解放を得た事になる。


咄嗟にポケットを探ると前もって忍ばせていた栓抜きを握りしめ、それを勢い任せに振りこんで男の顔を思いっきり殴り倒す。


こめかみあたりに金属部分が当たったのだろうか。


さすがに悶えて横に崩れた隙に腹部を蹴りつけながら体を這いだして、素早く鍵を開けると扉を開く。


男の手が足首を掠めた瞬間にはヒヤリとし、それでも何とかその身を部屋の外には逃がすことが出来た。


迷っている暇はない。


エレベーターを呑気に待つ余裕はないのだ。


こうして動きだして見れば理解する、自分もまともに動けるほど平常でない事を。


やはり殴られたのが原因か上手く平衡感覚が保てないのと、足が震えてもつれてしまうのだ。


気丈に振る舞っていようが体までその恐怖を跳ねつけることは出来なかったらしい。


よろめきながらも非常階段に走れば背後で響く扉の開閉音と男の恨みがましい声。


さすがに、次に捕まったら本気でヤバい。


そう・・・分かるのに・・・。


ままならない体が憎らしい。


ポケットに携帯は入っているのにそれを取り出す時間すら惜しい。


でも・・・


色々と付箋をつけたでしょ?





気付いて・・・・茜・・・。



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